あるフィリピン人女性が「育児困難」に陥った3つの理由

育てられない母親たち【13】
石井 光太 プロフィール

今後ますます養育困難な外国人親が増える

公立小学校の教諭は、こう語っていた。

「外国人だからいけないとか、水商売だからいけないと言うつもりはまったくありません。親の通訳になってあげようとする子供もいれば、明け方まで帰って来ない母親の代わりに弟や妹の面倒を見る子供もいます。

ただ、それは親がきちんと子供を愛していたり、子供が苦境に耐えられる力を持っていたりすれば、の話です。親の中には自分のことばかり考えて子供を顧みないとか、子供自身がすごく弱い性格であるというケースがあります。

そういう場合、子供が抱えているハンディーが何倍も大きくなってきてしまう。だからいったんうまくいかなくなると、崩壊していく度合は外国人家庭の方が大きいと言えるのです」

逆の目線で考えても同じだろう。この連載で見てきたような養育能力のない日本人親が外国で子育てをしたらどうか。言葉の問題、労働環境の問題、経済的な問題などが絡み合い、日本にいた時より複雑な問題が生じるのは明確だ。外国人とてそれと同じことなのである。

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ベネッサの家庭にかかわった福祉関係者によれば、外国人の場合は発見や救出も難しいという。その理由を次のように語る。

「外国の人たちはあまり地域と接点を持っていません。むしろ、仕事先の友達なんかとグループをつくって、そこで助け合いをしている。ベネッサさんが友達に子供を預けたりするのも同じなんです。しかも、子供を預けるというのは、彼女たちの国では普通の感覚なんだとか。

こうなると、なかなか子供たちがどういう状況に置かれているのかを把握することが難しい。もし発見できても『これは私の国の常識だから』と言われればどうしようもないところがあるし、それ以前に同じ言葉できちんと話し合うということができない。だから、どうしても日本人より発見・介入が遅れがちなんです」

 

在留外国人の数は右肩上がりに増えているし、政府もそれを後押ししている。

だが、それは同時に養育困難な外国人親も増える可能性があることを意味している。教育や児童福祉の現場は懸命にそうしたことに対応していこうとしているが、まだ足りない部分もあるし、市民の理解もそれに及んでいない。

日本で外国人が困難に陥った時、その子供はさらに困難な状況に陥ることがある。犠牲者はむしろ子供なのだ。

そのことを前提にして、外国人を招いていくべきだろう。

2015年2月20日、神奈川県川崎市の多摩川河川敷で13歳の少年の全裸遺体が発見された。事件から1週間、逮捕されたのは17歳と18歳の未成年3人。彼らがたった1時間のうちに、カッターの刃が折れてもなお少年を切り付け負わせた傷は、全身43カ所に及ぶ。そこにあったあまりに理不尽な殺意、そして逡巡。立ち止まることもできずに少年たちはなぜ地獄へと向かったのだろうか。