中国政府が「ビットコイン撤退」を決めた深い理由

習近平はこれを怖れていた
宿輪 純一 プロフィール

中国の政策転換

中国の経済政策や金融制度を見るときには、一部だけではなく全体でみる必要がある。今回のビットコイン・マイナーの規制は、習近平国家主席の重要課題の金融リスク防止対応でもある。

ビットコインは、公開市場である取引所は閉鎖されたものの、いかにも中国らしいことに、店頭市場(OTC取引)は粛々と行われている。つまりは、いまだに資本の流出が続いているといわれている。今回はマイニングまで閉鎖することで、徹底的に排除しようとしているのではないか考えられる。

全体の流れとして、中国は資本規制の強化に見られるように、国内に資金をとどめておこうとする政策に転換している。

 

人民元の国際化という通貨政策も、人民元の国際通貨基金(IMF)の「人工通貨」である特別引出権(SDR)の5番目の計算ベース(バスケット)入りが2016年10月で終了し、流れが逆転した。

それ以降は、資本(移動)の規制を始めたのである。外為実務取引に使われる基準値も、それ以前は、中国の外国為替市場を運営する中国外貨取引センター(CFETS)の数値をベースとしてきたが、その後、昨年5月から中国人民銀行が恣意的に決定することになった。

筆者は以前、上海郊外にある(以前は外灘の金融街にあった)中国外貨取引センターを実際に訪問し調査したことがある。中国のインターバンク為替市場は、ここで認可され、基準値を出された通貨のペアを取引所のように扱っている。もちろん全面的にシステム化されており、基準値の算出も明快であった。取引は清算システムまで接続されている。

中国人民銀行が基準値を恣意的に設定可能になってから、結果的に前日対比7割の比率で元高方向になった。ちなみに、2016年は元高方向に5割強であった。つまり、元安を恐れ、元高に誘導しているのである。

米国トランプ政権は日本との交渉でも分かるように、共和党政権らしく、貿易問題の解決に為替レートを使わない、つまりドル安政策を採用しない。

そうはいっても、中国が自主的に元高に誘導するということは、中国が巨額の対米貿易黒字を保有するだけにトランプ政権にとっては好感を持たれるであろう。米国と中国の経済関係は年々拡大しており、例えば米国は現在、原油産出量1位であるが、その輸出先1位が中国である。

さらに、中国は先に述べた共産党大会の安定運営のために、景気刺激的な政策を継続していたが、大会終了後、その無理な政策を転換し、金融リスク防止に取り組んでいる。

この元高誘導もその一環という事もできる。資本流出を止め、人民銀行が恣意的に基準値を決定できるために、外貨準備も増加中である。 米国債の購入までも抑え、国内に資金を還流させようとしているという話も出て、為替市場に影響も出ており、あえて中国当局がコメントまで出す事態になっている。

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