では、いったいどれくらいでこの初期投資を回収しなければならないのか?

通常は3年。銀行で資金を借りている場合、最低5年以内で回収しなければならないという。

ウチの店の初期資金は借り入れなしの自己資金だったため、幸い毎月の返済に追われる心配だけはなかった。しかし、店を経営するということは、売り上げがあろうとなかろうと、毎月ランニングコストがかかるということだ。
 
「八ヶ岳わんこ物語」の場合
 
  家賃      10万
  人件費     50万(給料1人分30万+アルバイト)
  食材原価    20万
  光熱費・諸経費  10万

        計 90万

食材原価とアルバイト賃金は月によって増減があるが、ウチの店のランニングコストは、平均して90万円くらいだったと思う。

それに初期投資の回収分17万円をプラスとすると、1カ月にざっと100万円以上は売り上げなければならないことになる。それは可能だろうか?
 
月100万円を売り上げるためには、月に25日営業として、一日平均4万円の売り上げが必要だ。が、カフェの客単価はせいぜい500円~1000円。夜にディナーのお客さんが入れば1500円~2000円程度が見込めるが、いかんせん場所が高原の別荘地なだけに、平日はお客が少なく、売り上げは昼夜合わせても1万円そこそこ。頼みの土日で3~4万円というところだった。
 
さすがにGWや夏休みになると、ウチの店も大入り満員の大繁盛になる。1日の売り上げは5~8万円。7、8月や連休のある5月、9月は、売り上げが100万円を超えることもある。だが問題は冬場だ。
 
店のある富士見高原は、標高約1200メートル。雪こそそれほど多くはないが、とにかく冬は寒い! 別荘族の大多数は、11月の半ばには水抜きをして別荘を閉め、翌年のGWまではやって来ない。冬季は観光客もほとんど来ないので、実に12月から4月までの5カ月間、カフェは開店休業状態になってしまうのだ。

看板犬であるリキと。夏は窓がフルオープンになり、とても気持ちいいのだ、が・・・写真提供/折原みと

とはいえ、マスターは固定給で雇っている。ほとんど売り上げがない月でも給料を払わないわけにはいかないし、家賃、光熱費も同様だ。当然、1年の半分近くは大赤字。GWや夏場にどんなに頑張っても、年間通すと採算が合うはずはない。初期投資の回収など夢のまた夢。それどころか、赤字を補填するために、さらなる投資が増えて行く。

あなおそろしや、おそろしや……。

 
(3)友達の罠
 
ここで、3つ目の罠が登場する。それは、「友達の罠」だ。友達が来てくれれば、店は何とかなる、と思い込んでしまう罠である。
 
「わんこ物語」をオープンした2004年のGW。店は友人やファンの方たちでにぎわった。だけど、前述したように不便な場所に、そう度々足を運んでいただけるわけがない。頼みは別荘地内に定住している友人たちだ。それでも、この点に関してだけは、私はそれほど楽観的ではなかった。
 
いくら友人だからといって無条件で頼れるわけないじゃない。そこで考えたのは、「お友達割引き」だ。ご近所の友人たちに飲食20%引きのサービスをすることにしたのだ。おかげで、友人たちはしょっ中来てくれたが、悲しいかな20%OFFではほとんど利益が出ない。
 
儲けはなくても閑古鳥が鳴いているよりはいい。しかしこの「友達の罠」という点にも、ウチの店は見事に当てはまっていたことになる。