「オリコン1位」はなぜ巨大な影響力を持つのか? 編集主幹が明かす

「本当の流行歌」が見えなくなった時代
柴 那典 プロフィール

ヒットチャートがハッキングされた

では、10年代に入ってからのAKB48を巡る状況にオリコンはどう対応したのか。垂石はこう語る。

「握手会や即売会ということ自体は、70年代からずっとあったんですね。たとえば演歌歌手は各地で握手会をやってレコードを売ったりしていた。ランキングにはその数字もある程度加味していました。

けれど、AKBが出てきてからはそういうレベルの話ではなくなってきた。そうなったときにオリコンはどうすべきなのかということを考えて、我々なりの基準を整備して対応しました。

即売会の売り上げの数字を一度全部確認させてもらって、通販会社には一般ユーザーの手元に本当に渡っているかどうかのデータも見せてもらいました。

その上で、明快な基準を設けて、そこに合致しているものは数字に反映していこうということになったんです」

オリコンランキングで上位になる意味とは?〔PHOTO〕gettyimages

前述の通り、オリコンのランキングの価値を担保してきたのは、それが売り上げ枚数という一つの基準で徹底して正確な尺度で作られたものである、ということだった。そして、オリコンはその一貫した基準を守り続けることを選んだ。

シングルが売り上げ上位に入ることで話題を呼び知名度が拡大するという、ランキングの持つプロモーション効果もいまだ変わっていないと垂石は言う。

「ランキングは、今もアーティストブランディングにはとても有効に働いていると思います。AKB48だけでなく、乃木坂46にしても欅坂46にしても、やっぱりオリコンランキングで上位になることによって急激に知名度を上げました」

そういう意味では、オリコンは自らのやり方を守って誠実にチャートを作り続けてきたと言っていい。

しかし、それが持っていた「人間の対決」という魅力は、いつの間にか、ランキングの中ではなく、その外部に移行していた。

 

AKB48がシングル選抜総選挙を初めて行ったのは2009年だ。

秋元康自身は、選抜総選挙を始めた理由について、テレビなどで「ファンから『わかってない』と言われたから」と語ることが多い。

メディアに露出するメンバーを運営側の恣意ではなくファンの意見をもとに選抜するというコンセプトが選抜総選挙の出発点となった。

しかし、まもなくそれは、グループにとって大きな意味を持つ巨大イベントに成長する。前田敦子と大島優子のライバル関係、指原莉乃の逆風からの復活と初の二連覇など、数々のドラマが生まれた。

総選挙開票イベントはテレビの地上波で生放送され、高視聴率を見込める人気コンテンツに成長した。