世界一の「美味しい」を求めた料理人が行き着いた場所

アマゾンは食材の宝庫

触れたことのない食材に遭遇

僕が初めてアマゾンを訪れたのは、2015年5月のことだった。それから2年間で4回、アマゾンへ足を運んだ。なぜそんなにアマゾンに通うのか。それはこの地が僕に、食の豊かさとは何かを考えさせてくれるからだ。

アマゾンの料理人 世界一の“美味しい”を探して僕が行き着いた場所』には、料理人としてイタリアとスペインで10年近く修業を積み、最後の修業の場としてペルーを選んだ僕がアマゾンと出会い、のめり込んでいく様子を書いている。

アマゾンに興味を持ったきっかけは、修業先のペルーのレストランに毎日のように届いたアマゾンの食材だ。体長3メートルもある淡水魚の王者ピラルク、色とりどりの唐辛子、ヤシの新芽チョンタ。原種に近い鶏「ガジーナ・デ・チャクラ」をスープにすると、肉は真っ黄色になりとてもいい出汁が出る。

市場で売られていた唐辛子
ガジーナ・デ・チャクラ

現地に行けば、もっと珍しい食材と出会えるだろう。そんな期待を胸に、僕はアマゾン滞在を計画した。

いま思えばかなり無謀なことだが、僕は初訪問で、現地で生活する住民の家に滞在した。彼らの暮らしの中にある「食」に触れてみたかったからだ。旅行会社のアマゾンツアーにあるようなホテル形式のロッジに宿泊し、ガイドに付き添われてカヌーで川下りをしたり、果樹園を散歩したりするだけのものでは、満足できないことはわかっていた。

何軒もの旅行会社から門前払いをくらう中で、僕の願いを叶えてくれたのは、アマゾンの玄関口イキトスにある小さな旅行会社のおじさんだ。

僕は彼の伝手で、ラウル家に転がり込んだ。ガイドもつけずにアマゾン川を舟で北上し、奥地に入るなんて、よくも無事に帰ってこられたものだと思う。

 

だが、あの初訪問があったからこそ、僕はアマゾンの虜になった。アマゾンは食材の宝庫と言われるが、毎日の食卓は思いのほか、質素だった。家の近くに都合よくフルーツのなる木はないし、毎日もぎたてのフルーツが食べられる訳ではないのだ。

深夜に毒グモや毒ヘビがウヨウヨいるところを、弓矢をたずさえ一時間近く歩いても獲物が見つかるとは限らない。見つかっても獲物との真剣勝負に勝つとは限らない。それでも彼らは淡々としている。