写真:著者提供
# 仏教 # ライフ

坊さん、マイカーで遍路開始。

そして僕は四国遍路を巡る③

サラリーマンだった主人公が突然お坊さんになる様子をユーモアある筆致で記したベストセラー書籍で、映画化もされた『ボクは坊さん。』。その著者にして、愛媛県今治市にある栄福寺の住職・白川密成さんの四国遍路巡りと、お坊さんとして過ごす日常をお送りする本連載。お遍路巡りの相方はマイカーとiPhoneです!

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初おせったい

■6月5日(続き)

40番、観自在寺をお参りして、門前の(恐らく)地元の柑橘をミキサーにかけているシンプルなジュース屋さんに惹かれ注文する。200円。

写真:著者提供

店の前のベンチに腰掛けて飲んでいると、初老の男が、

「歩いているの?」

と聞いてきた。「車です」

と答えると、「車の人には飴はやらん」と言う。

どうやら店の人ではなく、店の主人の知り合いらしい。

言葉だけを抜き出すと、ただの「嫌なおっさん」のような雰囲気だが、不思議と腹が立つような雰囲気ではない。かといっていい気分ではないけれど。

しばらくその人と話していると、少し言いにくそうに「高知のお饅頭食べて」という。「車ですよ」と笑いながら言うと、「いいから、いいから」

これが、今回のシリーズの「初おせったい」となった。

「おせったい」は四国遍路で今でもよく見られる風習だ。四国の人は、お遍路さんを見つけると食事やお金を差し上げる行為が今でも頻繁にみられる。これは「お遍路さん」という修行者に布施をすることで、自分達にも功徳があるという思いや、お遍路さんが「お大師さま(弘法大師)」と一緒にお参りしているという考え方(同行二人、どうぎょうににん)があるので、「お遍路さんを助けることは、弘法大師を助けることだ」という、思いが四国の人にあるからだ。

 

僕が10年ほど前に「歩き遍路」を始めた時にも(それは途中になってしまっている)、歩いていると車が止まり、下りてきた地元の人から「これで昼食でも食べて」と千円札を渡されたことがあった。その時も、「お遍路さんをあがめる」ような雰囲気ではなくて、「忙しく働いている自分から見ると、歩き遍路というのは、最高の贅沢だ」という話をされていた記憶がある(その通りだ思う)。

僕が住職を務めている栄福寺でも、地元銀行の行員さん達が「創業祭」でおせったいをしてくれたり、昨日も若い女性が、お汁粉を鍋で持参してお遍路さんにお接待をしてくれた。その方もそうだが自身がお遍路の経験があり、その時の思いから、おせったいを定期的にされる方も多い。以前には、頻繁にお弁当を10食ほど手作りして、おせったいをされていたおばさんもいた。綺麗事のように聞こえるかも知れないけれど、みなさん「自分はお接待を“させてもらっている”」と話されることが多く、その表情はどこか安堵の表情がある。

車に戻ると、すでに14時10分。観自在寺に到着したのが、13時だったので、かなりゆったりとしたペースだ。しかしお遍路はお寺でその人が「拝む時間」や「出会う人」によって、まったく変わってくるのでそれもいいと思う。

観自在寺の門前(写真:著者提供)

41番方面に向かう途中で、先ほど昼食を食べた施設で、先ほどは予約でいっぱいで受けることができなかった整体マッサージの施術を受ける。ここ数日、高野山の堅精(りっせい)という大切な伝統行事で配役があり、また昨日は晋山式の司会と緊張が続いていたので、ちょっと身体をゆるませたかった。真珠の育成にも使うという海水の風呂にも入る。