聴覚障がいアスリートがパラリンピックに参加しない「複雑な事情」

「デフリンピック」をご存じですか
河野 正一郎 プロフィール

「デフパラ格差」

ここで、パラリンピックとデフリンピックの格差について指摘しておきたい。冒頭に紹介した女子デフバレーチームは、今回のデフリンピックに参加するため、監督らスタッフ9人はそれぞれ約30万円を自己負担して会場となったトルコへ渡航した。

一方、パラ競技の選手やスタッフはたいていの場合、自己負担なしで国際大会に参加している(一部のパラ選手は世界ランキングを上げるために自己負担で大会に出場しているケースもある)。

また、デフバレーボールは毎月1回、週末や連休を利用して代表チームの練習をしているのだが、パラ競技は東京のナショナルトレーニングセンターなどを練習場所に使えるのに対し、デフ競技の団体には常設の練習場所はないため、民間の体育館とホテルを借りて練習せざるをえない。

デフバレー協会の大川裕二理事長は「協会の事務局員は別の仕事と兼務で給料はゼロ。それでも2017年は約1000万円の赤字で、選手とスタッフの自己負担やスポンサーからの支援でまかなっています」と話す。

 

障がい者の競技団体に対しては、国から日本スポーツ振興センターを通じて「強化費」などの名目で助成金(2016年度は総額約12億8千万円)が配分されている。振興センターの職員が「競技の強さや競技団体の運営方法などを評価して配分しています。パラとデフで一切差はつけていません」と話すように、国からの補助金に「デフ・パラ格差」はない。

デフ・パラ格差を生む大きな要因は、企業などからの寄付額の違いだ。競技別の協賛金額は発表されていないが、結果として、パラ選手の大会渡航費の自己負担額は、多くの場合はゼロだったのに対し、デフの選手やスタッフは今回のデフリンピックでも数十万円が必要だった。