いま視聴率が取れるテレビドラマの傾向と「時代の気分」

2017年、最大の収穫は…?
堀井 憲一郎 プロフィール

2017年ドラマでこの1本となるとやはり『カルテット』だろう。

1月のドラマ、TBS火曜10時の放送で、松たか子×満島ひかり×高橋一生×松田龍平の物語である。

スリリングなドラマだった。

物静かに話は進んでいくのだが、途中からどんどんミステリアスになっていき、説明されてなかった部分が明らかになるにつれ、よく考えるとかなり怖い状況に進むのだけれど、なぜかドラマの雰囲気はずっと明るいトーンのままで、コミカルに進んでいった。不思議と暗さがなかった。だからと言って軽いドラマでもない。あまり見たことのない新しい試みだったとおもう。

すてきなドラマだった。

しかし視聴率は9.8%で始まって、いっとき7.3%まで落ちて、一回11%までいくけど、最後は9.8%で、まあ、新しいものの受け入られ方というのは、こういうものなのだろう。でもドラマ好きたちのあいだでは、とても高い評価を受けていた。次どうなるのかわからない、というドラマ本来のおもしろさを持ち合わせていたところがすごい。

2017年、一番の収穫だった。唯一の収穫に近い。

 

ストーリーよりもキャラクター

それ以外に2017年らしいドラマ(つまりは個性のあったドラマ)には、綾瀬はるか×広末涼子×本田翼に西島秀俊の『奥様は、取り扱い注意』、高畑充希の『過保護のカホコ』、 波留×東出昌大の『あなたのことはそれほど』が挙げられる。

みんな恋愛がらみではあるが、ストレートな恋愛ドラマではない。行き違いから艱難辛苦を乗り越えての恋愛成就ドラマが作られる時代ではないから当然なんだけど、いまどきの男女の物語は、それぞれのキャラクターが際立っていないと受けない。

ストーリーよりもキャラクターである。

簡単にいえば変な人の恋愛物語じゃないと見てもらえないのだ(ちなみに『カルテット』はキャラもストーリーも、どちらも新鮮だった)。

『奥様は、取り扱い注意』は、セレブ主婦・綾瀬はるかのドラマだったが、そもそもの設定がかなり奇天烈だった。

セレブな若奥様は、もともと天涯孤独で、ある国(たぶん日本ではない)の工作員として、つまり一流スパイとして活躍していた前歴を持っていた。綾瀬はるかは殺陣が見事だから(NHKのドラマで見られる)、そのアクションシーンを生かすための設定なんだろうとおもっていたが(もちろんそういう目論見はあったとおもう)、ドラマはご近所の主婦仲間の広末涼子と本田翼を巻き込んで不思議な展開を見せた。

主婦のお悩みドラマとして始まったのに、物語はどんどんスライドしていき、描かれる世界が大きくなっていってほとんど妄想世界のような広がりを見せていった。

しかしどこまでも「明るい」のだ。

『カルテット』もそうだったが『奥様は、取り扱い注意』も明るい。ついでにいえば『カホコ』も『あなそれ(あなたのことはそれほども)』もふしぎに明るかった。

2017年ドラマのポイントはその「明るさ」にあった。

ただ明るいのではなく、本来なら暗くなりそうなテーマなのに、そこに流れている空気が明るかった、というところにある。

空虚な明るさとも言えるし、清々しい明るさでもあった。