ベタなものほど受ける
2017年のドラマはやはり医療ドラマと警察ドラマが中心だった。
連続ドラマがかつての人気を保てなくなって、医療ドラマと警察ドラマがメインとなって久しい。まだその流れの中にある。しかしすこーしだけ新しい風も吹いているように見えた。
それは、何となく「硬直した空気を和ませながら突き破ろう」というような風のようで、私には何だか1970年代の風と少し似ている気がして、懐かしい。ただの勘違いだという気もするが。
ドラマ全体の視聴率は(むかしと比べれば)ずいぶんと低い。
夜の9時か10時に始まる連続ドラマで、放送期間が3ヵ月のもの(だいたい11話くらい)、2017年はそれが44本あったが(私の数え方による)、全ドラマ全回の視聴率を平均すると9.5%だった。
いまは10%越えれば、まあドラマとしてはそこそこ見られた、という時代なのである。
2017年ドラマで視聴率が高かったほうから並べると、まず『ドクターX』で、これはもういまや別枠、昔の『水戸黄門』のようなもので、シリーズ化されて安定した視聴率、ついでに内容も安定していて、「私、失敗しないので」という決めセリフどおり、ほんとに失敗しないドラマとなりました。もちろん安定した面白さで、だからどうなるんだろうとドキドキすることはあまりなく、よし、今回も大丈夫だ、いつもと変わらぬ、と毎回、確認させていただいてます。
視聴率は全10話で、最低で19.0%、最高が25.3%、平均で20.7%という化け物番組です。
次いで視聴率が高かったのは『陸王』、そのあと『コードブルー3rd』、『A LIFE』、『緊急取調室』と続く。平均視聴率は、それぞれ16.0、14.6、14.5、14.0である。
医療ものが『ドクターX」『コードブルー3rd』『A LIFE』、警察ものが『緊急取調室』となる。
『陸王』はTBS日曜9時枠が力を入れたときに出してくる「企業の逆転ドラマ」で、きっと最後は逆転するんだろうなと信じつつ、逆境にある主人公を応援するドラマである。展開がベタだからこそ、熱くなって見られるストレートな物語で、こういうのはやはりTBSがとても得意としている。
どうなるかわかっているドラマが 視聴率が取れる。
それもベタなものほど受ける。つまり物語の祖型のようなわかりやすいパターンものが、強く受けている。いつの時代もだいたいそうなのだが、いまは特にその傾向が強いとおもわれる。おそらくテレビ視聴者が高齢化していってるからだろう。
表面的には、とても落ち着いた世界である。
言い方を変えれば、変わらない世界であり、若い者には自分がどう参加すればいいのかをつかみにくい社会だともいえる。居心地はいいが、閉塞している。
2017年、最大の収穫ドラマはこれだ
しかしそれでも挑戦してくるドラマはある。
少し風穴を開けようとするドラマは新鮮で、軽い衝撃を与えてくれる。
2017年にもそういうドラマはあった。
ただ視聴率が取れない。それも10%にたどりつかない。いいドラマの視聴率はいまはそんな感じになってしまう。