モスバーガーが「創業以来2度目の絶不調」に苦しむ致命的な原因

強みが弱みに変わってしまった
王 利彰

もうひとつ、ファスト・カジュアルの店舗がこだわるのは「見た目」である。「不健康でダサい」というイメージが強いファストフードの店舗と差別化するため、店舗の外観や大看板を工夫した。当時のマクドナルドなどは、とにかく目立つように、赤や黄色の原色のプラスチックの看板に内部から明るい光を当てる「行灯方式」だった。それが一層不健康なイメージを強めるとして、ファスト・カジュアルではプラスチックの行灯や原色を使わないようにした。内外装デザインも、木材を多用した、落ち着きのある洒落たデザインを採用している。

 

「緑モス」の誕生と躍進

そして、見落としてはならないのが食材の違いだ。ファスト・カジュアルでは、生の食材を店舗内で客に見えるようにして加工調理する。しかも、できるだけ新鮮な野菜を多用するのである。

ファスト・カジュアルの店を起点として、2000年前後に米国で流行ったのが、最近日本でも普及している「低炭水化物ダイエット(アトキンスダイエットやロカボとも呼ばれる)」だ。当時のLAで大人気だったハンバーガーチェーン「IN&OUT」の裏メニュー「プロテイン」と呼ばれるハンバーガーは、炭水化物であるバンズを使用せず、レタスの葉で肉を包んで提供する。ちなみに同様のメニューはモスバーガーで現在「菜摘」として定番で提供されているし、2014年に日本にも進出した米国の「カールスジュニア」にもある。

マクドナルドでは、生産性向上のために、ビッグマックなどで使うレタスは工場で刻んでおり、季節によっては国産ではなく海外から輸入したものになっている。刻みオニオンも、乾燥玉ねぎを水で戻しているだけだ。

桜田慧社長が亡くなる以前から、モスバーガーは丸ごとのレタスや玉ねぎを店舗でカットする方式を採用していた。調理に手間をかけ、その様子を客に見せる。このファスト・カジュアルの発想は、まさしくモスにマッチしているのではないか——そう考えたモスバーガーの経営陣は、1998年に新デザインの看板と内装を備えた店舗を三軒茶屋でテスト開業した。手作り感のある緑色の看板と、野菜を強調した商品ビジュアルから、後年「緑モス」と呼ばれるようになったタイプの店舗である。

このテスト店舗の快調により、モスバーガーは「緑モス」を2000年前後から大々的に展開していった。目玉商品は、大型のミートパティをバンズでなくレタスの葉で巻いた高額のハンバーガー「匠味レタス」。前述したように、当時米国で大人気だったロカボメニューをいち早く取り入れたのだ。さらに「緑モス」の好調は、フランチャイジーに古臭くなった店舗を改装させる格好の動機にもなった。

緑モスの展開が進みつつあった2004年当時の「匠味レタス」(筆者撮影)

この「緑モス」への転換が契機となり、モスバーガーは業績を大きく伸ばしただけでなく、ハンバーガー業界で確固たる地位を築くことにも成功した。決して業界トップを獲りに行くわけではないが、いわば「永遠の二番手」ともいうべき独特の立ち位置を確立した同社のその後は、皆さんもご存知の通りだろう。