モスバーガーが「創業以来2度目の絶不調」に苦しむ致命的な原因

強みが弱みに変わってしまった
王 利彰

さらにメニューの面でも、調理時間を短縮するために高速でミートパティを焼き上げられるクラムシェルグリル(マクドナルドで使用しているのと同タイプ)導入や、「日本人の好みに合う」という理由で使っていた牛豚の合い挽き肉を、マクドナルドと同じ牛100%に変更するなど、マクドナルドを後追いするかのような試行錯誤を行った。

だが、フランチャイジーの多いモスバーガーは、1980年代後半から低価格戦略を本格化させたマクドナルドに対抗できるほどには低価格にシフトすることができず、1990年代を不振の中で過ごしていた。

 

米国で見つけた「モスのルーツ」

モスバーガーという企業は日本生まれであるが、その原点は米国ロサンゼルスの老舗ハンバーガーチェーン「トミーズ」の日本化である。

創業者の桜田慧氏は、証券会社勤務時代に米国LAに駐在した際、たまたまトミーズを訪れ、ミートソースをたっぷり使ったジューシーなハンバーガーに出会った。桜田氏はそのトミーズのハンバーガーを日本人に合う味に変更し、パティも日本人の好きな牛豚の合挽き肉にすることで、人気商品を誕生させた。そうした経緯もあって、モスバーガーは米国のハンバーガー業界をいつも念入りにウォッチしていた。

米国の「トミーズ」店舗(筆者撮影)

その中でモスバーガーが注目したのが、1998年頃から米国の飲食業界で急成長を遂げた「ファスト・カジュアル」という業態だった(当時、まだその言葉は誕生していなかったが)。

「ファスト・カジュアル」業態の始まりは、「レストランコンセプト作りの天才」といわれた経営者フィル・ロマーノ氏が1982年に開業した、高級ハンバーガーチェーンの「ファドラッカース(Fuddruckers)」だと言われている(http://www.fuddruckers.com/)。

マクドナルドやバーガーキングなどのハンバーガーチェーンは、冷凍の食材を使い調理工程を見せないため、消費者は「冷凍食品を電子レンジで温めているだけではないか」という不信感を抱いている。そこでファドラッカースは、店内にオープンキッチンを設けて肉や野菜の処理・加工工程を見せ、さらにベーカリーまで設置し、素材感の訴求によって大人気を得た。

ファドラッカースの店舗(筆者撮影)

消費者が持つファストフードに対する不健康なイメージを打破するため、ファスト・カジュアル業態では食品添加物や動物性油脂、冷凍食品、調理済み食品をなるべく使わず、またそのことを顧客に大々的にアピールする。

サービス面でも、ファストフード店は「作り置きの商品を素早く提供するために、冷凍食品をアルバイトが電子レンジでチンしているだけ」と思われがちだ。そこで、ファスト・カジュアル業態は「セミセルフサービス」方式をとる。客は商品を注文してお金を払ってから客席に座り、料理は後から運ばれる。注文の後にオープンキッチンで作り始めることにより、出来たて感をアピールするのだ。

ファドラッカースのメニューはマクドナルドなどに比べて大人向けで、客単価も6ドル〜10ドルと倍近い。さらに、ファストフードとの決定的な違いが、ワインやビールなどの軽いアルコールを提供しているということである。その後米国のファスト・カジュアル業態は、ハンバーガーだけでなくベーカリーカフェ、スープサラダ、イタリアン、アジアン、メキシカン、HMR(惣菜)など様々なスタイルに発展していった。