名門企業・大企業の早期退職者が陥りやすい「意外なワナ」

「大転職時代」を生きるすべての人へ
秋山 輝之 プロフィール

「早期退職は会社のせい」が透けて…

転職活動できる状態にないのに焦って面接を受け、企業から呆れられる方もいます。

そもそも、早期退職は会社の意向に合わせて判断を迫られることのほうが多く、転職希望先の面接を受けるまでに準備時間がないため、退職理由や志望動機を「自分ごと」として説明することができない可能性も十分考えられるのです。

とはいえ、早期退職への応募が自らの望むところではないにもかかわらず、面接の場で「事業計画の変更により、自分が描けるキャリアに魅力がなくなった。そこで早期退職に応募し、前から描いていた新しいキャリアにチャレンジすることを決めた」と堂々と伝えられる方もいます。

一方で、「早期退職の募集が唐突にあり、いろいろ判断して退職することに決めた」と、自分の置かれた状況を説明するにとどまり、前職への未練が面接官に伝わってしまう方もいる。退職の経緯説明が曖昧だと、ビジネス経験やスキル以前に、大人と子どものような自立度の違いを際立たせることになりかねません

就職氷河期に大学を卒業し、30代で転職によるキャリアアップを経験したような積極的な方であっても、会社都合での退職となると離職理由の説明に苦しむケースをよく見かけます。会社都合での離職にはどこか後ろめたい感じ、説明のしづらさが伴うものなのです。

しかし、退職理由を語ることの気恥ずかしさを過剰に意識すると、面接官を困惑させ、自身の価値を下げかねません。前職で成し遂げたことを誇り、事業環境の変化に際し新たなキャリアに挑戦する意志を堂々と伝えられれば、面接官はその決意の重さを(自己都合の退職者以上に)魅力と感じてくれるものです。

 

「心から退職」するには時間がかかる

前回記事で紹介した田中さん(仮名)は、早期退職の判断から転職活動へのスピード感、さらには前職への未練の断ち切りも不足した転職者だったと言えるでしょう。

会社から(言外に)退職を勧められる形となり、反対する家族を強引に説得して早期退職制度に応募した田中さんは、転職活動こそ即座に開始したものの、その活動の中身は身の入らないものでした。のちに田中さんは、1月末の早期退職応募日から3月末の退職日までの約2か月間を、「早期退職の選択が正しかったのかと、悶々としていた」期間だったとふり返っています。

こうした後悔の念にとらわれたままの転職活動は、えてして「有名企業狙い」に偏りがちです。ことブランドに弱い私たち日本人にとって、有名企業に転職が成功することが、早期退職の選択が正しかったと周囲に証明できるわかりやすい根拠となるためです。多くの早期退職者と同様、田中さんもやはり、このわかりやすい転職の成功を求め、まず漠然と有名企業・名門企業への転職を希望しました。

しかし、有名企業以外には目もくれない転職活動、どこか退職を要請した会社や、反対した家族を見返してやりたい、という気持ちに強く支配された転職活動は、応募企業に見透かされるものです。書類は通らず、面接の機会にすら恵まれない期間が続きます。

そうこうしているうちに3月末の退職日を迎えるころになると、もともと転職活動をしていた人、太い人脈を持つ人たちが真っ先に転職していきます。さらに、早期退職応募後すぐさま就職活動を本格化させた人たちが続々と他社の面接を受け、数か月後にはそのうち3〜4割の再就職が決まったらしいという話が耳に入ってきます。のちに田中さんが「焦って我を失っていた」とふり返る期間です。

名門企業希望を反省した田中さんは、現実的な転職を目指し、再就職支援会社のカウンセラーや人材紹介会社のエージェントの言葉に耳を傾け、数多くの企業に応募しました。周囲や元同僚たちを見返したいという思いにとらわれた会社選びから、入れそうな会社選びへと、大きく舵を切ったわけです。