マンションを売却するとなったら、まず考えるべきなのは「リフォーム」である。
「当然のことですが、同じマンションを売りに出しても、部屋がきれいになっている場合と、経年劣化がそのまま放置されている場合では、価格が500万円、1000万円という単位で変わってきます」(住宅ジャーナリスト・榊淳司氏)
そのため、売却を相談した不動産仲介業社がリフォームを勧めてくることも少なくない。
「『リフォームしたほうが高く売れますよ』『きれいなほうが絶対にいいですから』とお客さんを焚きつけたうえで、『うちの会社と提携をしている、優良なリフォーム業者がいます』と業者を紹介するのです」(榊氏)
しかし、その提案には、「罠」が潜んでいる。第3部で見た通り、不動産仲介業者のほとんどは、いかに自分たちがカネを稼ぐかを第一に考えている。言われるがままにリフォームしてしまうと大損するということが頻繁に起こる。榊氏が続ける。
「不動産仲介業社が勧めてくるリフォーム業者は、割高な金額で工事をするケースが多いのです。というのも、そうした『リフォーム業者』は、ガスや水道、壁紙といった様々な専門業者の『代理店』にすぎず、その分コスト高になってしまう。
さらに、不動産仲介業者がリフォーム業者から紹介料を受け取っている場合が多く、そこでも『中抜き』されてしまうのです。
そもそも一般の客はリフォームの現場など知らないも同然。業者にとってはいいカモなのです。
本来、3LDKで70平方メートルの部屋なら、壁や天井のクロスからキッチンまで、すべてを新しくしても、200万円程度で済みますが、不動産業社に紹介された業者に頼むと、400万~500万円かかるなんてケースはザラにあります。なかには良心的な業社もありますが、10社のうち1社くらいでしょうね」
難しいのは、だからと言ってリフォームをせずに物件を売りに出すと、それはそれで売り手側が大きく損をしてしまう可能性が高い点だ。
「たとえば、フルリフォームすれば4000万円で売れる3LDK、70平方メートルの物件があったとします。
しかし、不動産仲介業社A社は、売り手にリフォームさせず、半ば強引に『リフォームはこちらで引き受けますから、その分安く売りましょう』と言って、3000万円で『買い取り業者B社』に買わせます。
A社は、B社に200万円ほどかけてその部屋をリフォームさせ、それを4000万円で売り出させる。A社は『両手仲介』(下の図を参照)で手数料を稼げ、B社はリフォーム代を差し引いても800万円近い差益を得られます。
しかし、もし売り手が直接優良なリフォーム業社に工事を発注できれば、200万円でフルリフォームを済ませ、それを4000万円で売り出すことができる。
つまり、リフォームせずに売り出した場合と比べて800万円も得することができるのです。この差は大きい」(榊氏)