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田舎の実家 「相続」すべきか「放棄」すべきかの見分け方

「とりあえず放置」が一番ダメだった

タダでいいから譲りたい

千葉県船橋市に住む黒木文彦さん(仮名・74歳)は、20年前に母親を亡くし、木更津市にある実家を相続した。

最寄り駅から車で15分ほど、周囲に家と畑が広がる130平方メートルの土地と、そこに建つ築35年、2階建ての住宅である。黒木さんが言う。

「兄に『母さんの世話をしてもらったし家はお前にやるよ』と言われ、当時は『もらえるものならもらっておこう』と軽く考えて相続しました。それが軽率だった」

12年前までは家に借り手がいた。しかし、その人がよそに移ると借り手がいなくなった。のどかな田園のなかの住宅は、裏を返せば借り手がつかない田舎の家だった。

「もう借り手もいないし、固定資産税を取られるだけだからと、8年ほど前に売りに出す決意をしたんです。

しかし、坪6万円で売り出しても売れず、その後、4万円まで下げましたがそれでもまったく売れる気配がない。『塩漬け』になってしまいました」(黒木さん)

5年ほど前からは、草が伸びて隣近所から苦情が出るようになった。無視するわけにもいかず、近隣のシルバーセンターに半年に一度の草刈りをお願いしたという。これには一回につき7万円かかる。

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黒木さんの嘆きが続く。

「家の整備を怠って『特定空き家』に指定されると固定資産税の額が6倍にもなると聞いたので、家を取り壊そうと思いました。

しかし更地にするとやはり固定資産税が高くなる。それで家の骨格だけを残そうと決め、150万円かけて工事をしました。これでも知り合いの業者に頼んで安くしてもらったのですが……。

もちろんいまでも固定資産税を毎年3万6000円きっちりとられている。ここ10年でこの土地と家にかかった金額は500万円近いと思います。

これからもただただおカネがかかるわけで、完全に『お荷物』。誰か引き取ってくれるならいっそのことタダでかまわないから譲り渡したい」

人口減少が進み、地方の家や土地が売れなくなった日本。田舎にある家やマンション、土地を安易に相続すると、売ることも貸すこともできず、黒木さんのように、何百万円もカネを吸い取られることになりかねない。

そうした事態を避けるためには、きっちりとした準備が必要。面倒くさいからと言って「とりあえず放置」するのが一番危険だ。そのままズルズルと相続することになり、その物件が「カネ食い虫」となってしまう。

 

大きな分かれ道となるのは、そもそも土地を相続するのか、それとも物件が赤字を垂れ流すことを考慮して「相続放棄」をしてしまうか、である。

もし相続する予定の不動産が「負」動産となる見込みがあるなら、「相続放棄」も念頭に入れておいたほうがいい。

では、相続か放棄かを判断するために、どんな準備をし、どう考えればいいのか。

第一段階は、親が死ぬ前に、その不動産が売れるかどうかを確かめておくこと。もしこの段階で売れないとわかれば、相続放棄を選択肢として考えはじめたほうがいい。

空き家が社会問題化するなか、売るためのルートが徐々に整備されてきている。不動産会社・リックスブレイン代表の平野雅之氏が語る。

「最近は『家いちば』というインターネットのサイトが業界で話題です。空き家を所有者自らが売り出す掲示板のようなサイトで、地方の要らなくなった土家や家を『10万円で売る』『無料で譲る』といった投稿が行われ、成約している」