2018.01.01
# 北朝鮮 # インテリジェンス

2018年、日本は北朝鮮「撹乱テロ」と闘えるか

今年こそ議論されるべき防諜のあり方
竹内 明 プロフィール

「かわいそうな漁民」で終わっていいのか?

2017年、冬の日本海沿岸部には北朝鮮の木造漁船が次々漂着した。なかには無人島に上陸して、窃盗まで働く者たちもいた。

遺体となって漂着する人たちもいたために、北の漁民に対する人権議論も沸き起こった。いわく、

「彼らはかわいそうな漁民であり、工作員ではないだろう。つまり、独裁者に搾取されて、苦しんできた人々なのだから、人道的な配慮を優先すべきだ」

たしかに、彼らの多くは工作員ではなく、漁民であると思われる。だが、日本に今、必要とされるのは、より冷徹な視点であるはずだ。

北朝鮮漁船漂着の最大の問題点は、旧式のエンジン1機しか積んでいない木造船で、北朝鮮人が日本領土に簡単に入り込み、盗みまで働ける環境を、日本という国が今なお、提供し続けているという事実が露呈したことだ。

「1970年代から1980年代にかけて、北朝鮮工作員による日本人拉致が横行した時期と、日本の現状は何も変わってない。盗まれたのが電化製品でなく、日本人の子供だったら、どうするのか。今回の日本側の対処に、北の工作機関も来たる日に向けての自信を深めているだろう」(警視庁公安部捜査員)

 

「どうするのか」というコメントに、違和感を覚えた方もいるかもしれない。それは、まさにあなたがた警察の仕事ではないのか、と。しかし、現場の捜査官たちは歯がゆい思いを隠しきれないのだ。

そこには、末端の捜査員ではどうにもならない、日本の現実がある。

ミサイル防衛は結構。だが恐怖は小瓶ひとつで作れる

日本の政治家たちは、「北朝鮮のミサイルから日本人の命を守る」と声高らかに言い、莫大な予算を投じてみせる。北のミサイル迎撃に備えた防衛予算は膨らむ一方である。

わかりやすく、目立つことだけに手をつける――。それも、北朝鮮やいまだその後ろ盾になっていると思しき中国への圧力にはなるのかもしれない。

だが今、警戒すべきは、北朝鮮による工作活動ではないのか。微量な化学兵器の液体が入った小瓶ひとつで、恐怖による日本世論の支配は完遂するのだ。これなら、北朝鮮にとって最低限のリスクで、最大の効果が生まれる。

私が以前、取材した元北朝鮮工作員はこう言った。

「韓国は軍や警察の警戒が強かったのですが、日本は海上保安庁や警察の警戒も甘いですから、はるかに浸透は簡単でした。無防備といってもいい。だから拉致が行われたのです。韓国と比べれば、日本は工作員にとって天国です」

工作員たちの中には、笑いながら、「タバコを買いに行ってくる」と日本に潜入していたような者もいたというのだ。

だが、この元工作員の指摘通り、日本では北朝鮮工作員たちの工作活動を防ぐ体制が整っていない。

必要なのは、海上の警備、電波の傍受、沿岸部の不審人物の通報体制だけではない。本国から浸透してくる工作員を受け入れる日本在住の補助工作員の動向把握や、協力者の獲得工作が重要となる。

これを行うのが、外事警察だ。だが、対北防諜をになう最大勢力である警視庁公安部外事二課の捜査員は、およそ120人。これは対北朝鮮、対中国の担当人員を合わせた数字だから、実際には対北朝鮮の防諜活動を専門としている捜査員はその半分の、わずか60人程度とみられる。

これは韓国国家情報院の50分の1に満たないと言われている。

さらに言えば、あの長い日本海沿岸部を管轄する各県警で、警備部の外事課に配置されている捜査員は10人にも満たないところが多い。

警察や自衛隊の電波傍受能力は極めて高いが、たとえ、日本近海での工作船の交信を捕捉できたとしても、現場に急行し、上陸する工作員を発見する体制が存在しないのだ。

現在の日本の防諜機能は、あまりにも「体をなしていない」と言わざるを得ない。

もう一度、言おう。2018年、日本の政治家は「国民の命を守る」ことへの本気度が問われている。

単に国民の焦燥感・危機感を煽るだけでなく、国民の足元にある現実的な脅威に向き合うべきだろう。北朝鮮は、日本の世論操作を狙って工作をしかけてくるのだ。

防諜のための組織、人、カネ、法制度を真剣に議論し、実現できるのか。私たち国民の側も現実を直視して、政治家たちの言動を厳しい目でチェックしていかなければならないだろう。

関連記事