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海上自衛隊「悲願の空母」になる「いずも」の実力

かつて空母大国だった日本の意地
伊藤 明弘 プロフィール

「鳳翔」は、第一次上海事変、太平洋戦争開戦からミッドウェー海戦に参加し、のちに練習空母として呉鎮守府第四予備艦となった。終戦後は除籍しつつも復員艦として特別輸送艦となり、1947年に解体され寿命をまっとうした、珍しい軍艦である。

日本海軍は正規空母をのべ26隻を運用し、他にも、航空巡洋艦、航空戦艦、はたまた潜水空母まで建造した。そして、これらを使って、世界初の空母を中心とした機動部隊を編成。真珠湾奇襲攻撃を成功させた。

これを受け、米海軍も大艦巨砲主義を捨てて、日本をまねたタスクフォース(任務航空艦隊)をすぐさま編成した。

日本海軍は、まさに世界に先駆けた「空母大国」だったのである。

戦後は冷戦という状況下、米ソの空母の大型化や原子力空母の導入が加速。現在のような「空母打撃群」として成長したため、かつて日本が空母大国だったというイメージは色あせてしまったが、その事実はもっと知られてしかるべきだろう。

 

陰謀めかしていうのは愚論

さて、そんな日本で「空母らしき艦艇」が復活したのが、1973年のヘリコプター搭載護衛艦「はるな」型で、これは戦時中の航空巡洋艦に近いものとなった。2009年には、全通甲板装備のヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」型(建造費975億円)2隻が誕生。これはスタイルから「軽空母」と言われているものの、機能面からみると、まだ空母の条件を満たしていないものだった。

そしていよいよ2015年、「いずも」型の登場となったのだ。全長・排水量とも「空母」の規定に達している、久しぶりの「日本の空母」だったのである。2番艦「かが」も2017年に完成済みだ。

「導入当初から『空母化』が既定路線だった」などと陰謀めかして書いているメディアもあるが、これは軍事・防衛関係の知識のある人に言わせれば「当たり前」すぎることであった。

問題は、空母「いずも」の実力やいかに、という点だろう。

[写真]2017年8月英メイ首相が来日時に訪れた際の「いずも」の内部(Photo by GettyImages)2017年8月英メイ首相が来日時に訪れた際の「いずも」の内部(Photo by GettyImages)

2018年3月末、航空自衛隊はF-35Aというステルス戦闘機を42機、三沢基地に配備することとなった。この戦闘機は米国でも最新鋭であり、ハイテクの塊である。機影がレーダーに映らないことはもちろん、パイロットのヘルメットにはHMD(ヘッドマウントディスプレイ)システムという、コクピットがバイザーの中に投影される、さながらSF映画のような最新技術も盛り込まれている(2億円以上する装備だ)。

陸上自衛隊では、陸上型イージスのイージスアショアやV-22オスプレイの配備が計画されるなか、海上自衛隊でもそれに準じた装備品が希望されるのは、当然といえば当然だろう。何しろ、それを積み込む「いずも」という「入れ物」は、もう揃っているのだから……。

その「いずも」型だが、筆者の取材では、すでにV-22オスプレイの自重の10倍の甲板強度に対応しており、F-35Bの垂直着艦にともなうエンジンからの排熱に対応する耐熱加工も施されているという。つまり、V-22オスプレイ、F-35Bともに、着艦することは理論上、可能ということになる。

「理論上」と述べたのは、「まだ試験は行っていない」という意味だ。いや、もしかすると外洋に出て、人目に触れない形では試験を行っているかもしれない。

「『いずも』は攻撃型空母なのか?

というわけで、「いずも」型は問題なく空母として運用できると思われるのだが、それでもいくつか考えておかなければならない点はあるだろう。

まずは、パイロットをどうするかという問題だ。

F-35は、「すべてコンピュータが制御するので素人でも操縦できる」と言われてはいる。だが、パイロットは海上自衛隊の隊員がつとめるのであろうか? その方向で調整を始めるとすると、そこに航空自衛隊は口を挟まないのか?

海上自衛隊の現役パイロットに話を聞くと、

「空自の力を借りず、F-35Bは自分たちの手で飛ばします」

というのだが、予算規模だけ考えても、「いずも」と「かが」に10機ずつF-35B(1機150億円以上)を搭載するとなると、予備機を含めて24機、3300億円が必要となる。

この計画に組織として空自が口を挟んだとしたら、海・空自衛隊共同で「いずも」型を運用しなくてはいけなくなるだろう。

次は、飛行甲板の構造だ。

「いずも」型はフラットな飛行甲板だが、もしF-35Bを発艦させるとしたら、できれば傾斜のついた「スキージャンプ型」の飛行甲板にすることが望ましい。

なぜなら、垂直発艦を行うと燃料を多く使うために、飛行時間が短くなってしまうからだ。

そこで飛行甲板の改造案もあるのだが、今の「いずも」型にスキージャンプ型を付けると、頭が重くなりひっくり返ってしまうと言われているのだ。冒頭で筆者が目撃した「いずも」の模型は、この検討を行った際に作成されたものだったのだろう。

この問題点は、「『いずも』型は攻撃型空母になってしまうのか」という問いかけへの答えにもなる。結論から言って、やはり「いずも」型は、艦載機としてのF-35Bをフル活用して運用されるような「攻撃型空母」には成り得ない。

ただ、興味深いことに、2017年12月21日から、「かが」が点検のためドライドックに入渠した。期間はいまのところ不明だ。何か「実験」が行われていても、不思議ではない。

かつては「空母大国」であった日本だ。周辺環境が緊張の度合いを増す中、日本の領海、またひいては日本本土を守るためにも、ぜひ「いずも」は防衛の柱のひとつとなるような、立派な航空母艦にしてもらいたいものだ。

1922年の「鳳翔」誕生からまもなく100年、「いずも」「かが」に加え、大改修をほどこした「ひゅうが」「いせ」の4隻による、空母機動部隊が現れるのかもしれない。