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行き詰まった世界を打ち破るヒントはロシア革命にあった

未来は逆流しながら進んでいく

100年経っても解決できない問題

ニュースでは大きく報じられなかったが、2017年は、1917年11月にロシアで社会主義革命が起きてから100年目の節目の年だ。1991年12月のソ連崩壊で、政治的にロシア革命は過去の出来事となったが、あのときに提起された問題は、現在も解決されていない。

ロシア文学に通暁し、日本を代表する知識人(インテリゲンチヤ)である亀山郁夫氏と沼野充義氏によるこの対談は、21世紀の世界が抱える問題を深く理解する上でとても役に立つ。

沼野氏は、〈ボリシェヴィキ(引用者註*ソ連共産党の前身)がどんな国家建設の理想を抱いていたかと言えば、そもそも実際に政権を奪取する前に、彼らにはっきりしたイメージがどれほどあったのか。本当のところは誰も具体的なこととしては思い描けなかったんじゃないですかね。

タイムマシンを使って、レーニン、スターリンを経て実際に築かれたソ連国家を、帝政打倒のために戦っていた頃の革命家たちに見せてやったら、ぞっとして、「自分たちはこんなものを作るために命を捧げているわけではない」と叫ぶんじゃないでしょうか。

もっと昔のことを言えば、若き日のドストエフスキーの空想的社会主義の理想というのは、何かもっと曖昧で、もっとロマンティックなものですよ。ユートピアというものは夢見られるべきものではあっても、実現のための設計図を引くようなものではなかった。

つまり、何を具体的につくるかというヴィジョンよりも、おぞましい現実に対して反逆し、戦うという側面が革命運動を動かしていたわけでしょう〉

と指摘する。ロシア革命を引き起こす動因となったのが、現状に反発し、ユートピアを目指すロマン主義であったという沼野氏の指摘は正しい。

そこから、暴力を用いてもユートピアを実現しようとするテロリズムが生まれる。亀山氏は、

〈まずテロリズムというのは十九世紀のロシアで生まれたと言っていいわけです。ドストエフスキーの生きて書いた時代はまさしくテロの時代ですし、ドストエフスキーが『カラマーゾフの兄弟』の第一部を完成させ、急死したその直後に皇帝暗殺が成功した、というのも象徴的です。

 

これは何度か書いたことですが、ドストエフスキーの死によって革命家の一部が刺激され、皇帝暗殺につながった側面だって否定しきれません〉と指摘する。

過激派「イスラム国」(IS)のテロリズムに21世紀の世界は悩まされているが、このテロリズムもイスラム世界革命というロマン主義の文脈でとらえることができる。

もっともISのテロリズムには、きまじめなロマン主義の要素だけでなく、軽いノリの遊びのような要素がある。ロシア革命にもこのような遊びの要素があった。沼野氏と亀山氏は、このような遊びの要素をロシアのポストモダニズムととらえているようだ。