最古の神話を読み解いたら、世界の不思議な「共通項」がわかってきた

ベストセラー『世界神話学入門』を語る
後藤 明

さらに死の起源については、世界各地に点在する、かつて人間は脱皮して若返っていたが、何かのきっかけでそれは蛇や蟹のみに許されることになったとする脱皮型神話、「人間は死ぬべし」という誤ったメッセージが伝わったとする神話、さらに木のように水に浮けば生きながらえ、石のように沈めば死が訪れる、という選択で死ぬ運命を選んだとする話、逆に石を選べば永遠の命が約束されたのに美味しい食べ物や花を選んだために死ぬ運命になった(バナナ型神話、日本のコノハナサクヤビメの話)、など一般に楽園喪失型と言われる神話も含まれるだろう。

さらに私は、日本列島は二つの神話群の交差した地点であるので、多様性をもった神話が生み出されたと考えている。

そして私は国立科学博物館が進める「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」に海洋人類学者として参加している。

台湾付近から八重山に海を渡ってきた最初の人類の移動手段を実証しようという試みである。そこで最初に日本列島に渡ってきた人々はどのようにして見えない島を目指して船出したのか、そして彼らが語っていた神話も考えてみた。

一見、とらえどころのないゴンドワナ型神話は、現代がもっとも必要とする思想を語っているのではないだろうか?

ストーリーラインのしっかりしたローラシア型神話は、神がいかに世界と人間を創造し、その後、人間がエクメーネ(居住地域)を拡大、やがて人間の間に自民族意識や権力が生まれたのかを語る神話である。

 

一方、ゴンドワナ型神話はそもそも人間と動植物や自然現象を区別しない時代、人間がその一員として森羅万象や動物、木々や花々と矛盾なく共存した時代の神話である。

アボリジニは言う、「すべてのものは、すべてのものに繫がっている」と。

人間も動物も森羅万象もそれぞれが役割を果たしており、それぞれが存在する権利を持っている。

これは自民族中心主義や征服者の思想をけっして導かない、現代の世界にもっとも必要な思考方式と言えないだろうか。

今回は世界で実際に記録されている神話の事例から人類最古の神話あるいは日本列島最古の神話を推測してみたが、次に私は実際に自分で神話を書くことに挑戦している所である。

読書人の雑誌「本」2018月年1月号より