「エホバの証人の活動のなかで、最もつらかったこと」元信者が告白

私がこの漫画を描いた理由【後編】
いしいさや

初めての相手は好きでも何でもない、専門学校の先輩。婚前交渉はエホバの証人と完全に訣別するためでした。婚前交渉をしたらもう戻れない、戻らないぞという決意がありました。

終わった後は、正直に言うとモヤモヤしました。普通は初めての経験は大切にするものですよね。本当にこれでよかったのかな――その頃にはもう信じ切っているわけではないんですけれど、「これで楽園にはいけないな。ハルマゲドンで死んじゃうな」と思いました。

教えを聞き続けて育っていますからね。むしろ、「やっと死ねる」という意識が強かったように思います。

 

そして「解脱」へ…

そもそも、私がエホバの証人との訣別を決めた最大の理由は、「NHKにようこそ!」(滝本竜彦の小説。ひきこもりの青年と、彼を立ち直らせようとする新興宗教の二世信者の少女を中心とした物語)を読んだからです。

実は、その作中にエホバの証人が出てくることは知っていました。この本は読んではいけないことになっていましたから。ただ、たまたま高校の図書館に本が置いてあって、つい読んでしまったんです。

その頃には、自分の環境がおかしいことには気づいていました。でもあらためて「やっぱりおかしかったんだ!」とはっきり分かった。その時はとてもテンションが上っていました。

「もうここにはいたくない!自分の道を歩きたい!」

母に集会に行かないのを咎められた時に、すべてぶちまけました。「本当は全部嫌だった!」って。母からは、「最近変だよ」「昔より頭悪くなったね」「エホバのことがわからないなんて!」など、いろいろ言われましたね。

「NHKにようこそ!」に出会えてよかった。あの本を読んでいなかったら抜け出せなかっただろうし、漫画を描くこともなかっただろうし、一生「奉仕」する人生だったと思います。

この漫画には、たくさん反響を頂きました。多かったのが「私もよく分かる」「共感できる」という声です。それって、もちろん皆さんがエホバの証人の信者だからとか、新興宗教の二世だから、というわけじゃない。

この話が、家族の、あえて強めに表現すれば「毒親」の話だからだと思うんです。親との関係に苦しんでいる人が、共感してくださったんじゃないかと思います。