「2018年」にも深〜い秘密が!美しすぎる「数の世界」への招待状

「数マスター」の二人が遊んでみたら
ブルーバックス編集部 プロフィール

金子みすゞの詩と「数」の世界が結び付く

西来路:ところで、『美しすぎる「数」の世界』がブルーバックスから再刊されました。数論の大家・加藤和也先生もお好きと仰っていた本が、より多くの方に読んでもらえますね。

清水:数の世界の面白さ、ふしぎさ、美しさを伝えたいという思いで書いたものです。早速、日本経済新聞の書評でも取り上げていただきました。

西来路:副題が「金子みすゞの詩で語る数論」ですが、なぜ詩と数学が結びついたのでしょうか。

清水:初めて金子みすゞさんの詩を読んだときに、目の前がパッと開けていく感じがしたんです。

西来路:ほう。

清水:その感覚が、数論を勉強していったときに、目の前が開けていく感じがしたのととてもよく似ていたんです。素朴な数遊びからはじめるのと同じように、金子みすゞの詩をモチーフにして数論を紹介できるのではないかと考えました。

西来路:金子みすゞさんの詩の、どういういうところが数論に結びつくのでしょうか。

 

清水:彼女の詩は、何気ない日常の世界がおどろきに満ちていることを教えてくれます。1、2、3……に始まる素朴な数の世界も、同様におどろきに満ちていることを、彼女の詩の力を借りて語りたかったのです。

西来路:なるほど。金子みすゞさんの詩は、視点が興味深いですね。

清水:そうなんです。たとえば、「ぬかるみ」という詩では、「この うらまちの ぬかるみは、ふかい おそらで ありました」と、ぬかるみにも新しい発見があることを教えてくれます。

数学もまた、新しい視点で見ることによって、その姿が明らかにされていく学問です。そういう雰囲気を伝えたいという思いもありました。

西来路:新しい視点で見る……。研究そのものですね。

清水:はい。とても有名な、「みえぬけれども あるんだよ みえぬものでも あるんだよ」という一節があります。数学の深い定理や、数学の研究をしているときの気持ちに通ずるものがあると思いませんか。

彼女の詩は、数の世界のふしぎさや美しさと、とてもよくマッチしていると思うのです。

西来路:なるほど。

「数学って役に立つんですか?」への答え

清水:「数学って役に立つんですか」という質問を受けることがあります。

西来路:私もあります。

清水:どう答えていますか。

西来路:主宰する公開講座の受講生に教わった言葉があるんです。

学びの目的は、新しいことや知らないことに出会うとワクワクすることそのものではないでしょうか。心が豊かになります。

清水:なるほど。教養としての数学ですね。数学はひとつの学問なので、知ることそのものの大切さがあります。

でも、もう少し具体的に、数学を知ることで得るどんな力があるでしょう。

西来路:……(考え込む)。そんなときは、「考える力がつく」と答えていますが、抽象的でしょうか。清水さんはどのように話されていますか。

清水:実は私も、「考える力」がつくというのが数学を勉強して得ることのできる力だといっています。

他に、図や表、数式を読み取る力がつきますね。

西来路:確かに。数字に騙されるな! 『統計でウソをつく法』(ダレル・ハフ著、講談社ブルーバックス)ですね。情報化社会で必須の力です。

清水:ええ。

西来路:そういえば、図や表、数式はひとつの言語でもありますね。使えるかどうかで、コミュニケーションや表現の幅が変わってくるように思います。ビジネスマンの強みになる要素ではないでしょうか。

清水:視野も広がるし、読める本も増えていきますね。

西来路:はい。

清水:西来路さんが数学好きになったきっかけはなんでしたか?

私の場合は、必ずしも数学が得意だったわけではなく、「数学が美しい」という言葉に接して、単純なのでそれを信じて(笑)。

数学の美しさにめぐり逢いたいというのが数学を続ける原動力になっているんです。

西来路:私は小学生のときから算数好きでした。問題を解くのが楽しかった。それから、数学者が魅力的だという理由もありますね。学生時代に夢をもてたのは、教わった先生方や友人のおかげです。

清水:数学は「神様が創った推理小説」だとよく話しているんです。

西来路:神様が創った推理小説ですか。言い得て妙ですね。これからも楽しみながら、少しずつ読み解いていきたいですね。

清水:はい。

清水健一
1948年、兵庫県生まれ。岡山大学理学部数学科卒業。博士(理学)。専門は整数論。賢明女子学院中学校・高等学校の教諭を経て、岡山大学、岡山理科大学非常勤講師

西来路文朗
1969年、広島県生まれ。大阪大学大学院理学研究科博士課程数学専攻単位取得退学。博士(理学)。専門は整数論。賢明女子学院中学校・高等学校の教諭を経て、広島国際大学看護学部看護学科教授、広島大学非常勤講師