地方消滅を加速する、霞ヶ関の「地方自治体いじめ」の構造を暴く

予算で縛り、忖度させる
今井 照 プロフィール

「計画を立てた自治体の責任だよね?」

これが「分権」時代に応じた、国の地域政策のパターンになりつつあります。具体的な計画を策定するのは自治体であって国ではないので、あたかも「分権」のように見えます。一方、地方自治体の側から見れば、(税収が伸びない中で)少しでも多くお金の配分を受けたいので、国が例示した政策メニューから選ばざるをえない。それが、国の思うままに動かされているという実感につながるわけです。

ここで問題とすべきは、責任の所在が国から自治体に転嫁されていること。「計画を立てたのは自治体だよね」ということです。それは裏を返せば、うまくいかない場合に「計画を立てた自治体の責任だよね」ということにつながります。

この仕組みの中で、国はいつのまにか評価する立場に変わっています。計画の目標となる業績評価指標(KPI=Key Performance Indicator)が立てられて、それに達しないと、国は「そんなことではダメだ」と他人ごとのように自治体を「評価」する。そうした構図が【図1】と【図2】から読み取れる、というのが北海道大学の研究チームの分析です。

連載第一回では、国の考える「地方創生」政策の中身がいかに間違っているかをさまざまな形で指摘しました。商品券による消費喚起は「先食い」にすぎなかったこと。予算名目をつけ替えただけの事業が多いこと。移住促進や産業誘致は人口の移動を生むにすぎないこと――。そして実は、今回ここまで書いたように、事業の「進め方」すらも間違っていたわけです。

 

「忖度」しないと予算がもらえない

平成26(2014)年11月に公布された「まち・ひと・しごと創生法」には、各市町村が「地方版総合戦略」という計画を「定めるよう努めなければならない」と書いてあります。いわゆる努力義務規定です。日本語として素直に読めば、努力しなさいということであって、作りなさいとまでは書いてない。

ところが、法律の公布からわずか1年ちょっとで、実にすべての都道府県と99.8%の市町村(1741市町村中1737)がこの計画を策定している(「まち・ひと・しごと創生本部」調べ)。調査の時点で策定していなかったのはわずか4市町村だけです。なぜでしょうか。それは地方創生関連の交付金をもらうためです。この計画を作らないともらえないからなのです。

しかも、国はご丁寧にもこの「地方版総合戦略」を作るための経費を、それぞれの自治体に1000万円という枠で用意しました。市町村の計画策定経費としては巨額です。多くの市町村は、計画づくりを東京などの大きなコンサルタント業者に委託しました。

総額200億円弱にのぼるこの予算は、言ってみれば、銀行系や経営系のコンサルタント業者に振り分けられる公共事業のようなものです。

計画づくりのために、国は丁寧なマニュアルを作成しました。当然のことながら、交付金をもらうためには国が認めてくれるような計画を盛り込んでおかなければならない。これは要するに「忖度」の世界です。どんな計画なら国は認めてくれるのか。都道府県の中には、市町村に対して手取り足取り、計画の添削や推敲をくり返したところもあると聞きます。