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港区育ちなのに「港区女子」に嫌悪を募らせる非・港区女子

A子とB美の複雑な感情【16】

元日本経済新聞記者にして元AV女優の作家・鈴木涼美さんが、現代社会を生きる女性たちのありとあらゆる対立構造を、「Aサイド」「Bサイド」の前後編で浮き彫りにしていく本連載。今回は、第8試合「港区女子」対決のBサイド。
今回のヒロインは文字通り港区生まれ港区育ちの「港区女子」。でも彼女のマインドはいわゆる「港区女子」とは全然違います、一体なぜ?

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港区民的な選民意識はある

南麻布の低層住宅の一角、大変ハイソな雰囲気漂う、イメージ的には蔦が絡んでいるのだが、実際蔦は絡んでいなかったかも知れないご自宅から、高輪の女子高に通い、慶応を卒業して商社に入った彼女は、もはや今はやりの港区の魅力を余すことなく詰め込んだような存在である。29歳までは実家に住んでいたが、30歳になる手前で三田にマンションを借り、現在はそこから東京本社に通う。

「恵まれているのはわかるし、正直今でも実家から通うっていう選択肢もあるし、それでもほとんどの同僚より会社は近いし地元はオシャレだしいいんだけど、さすがに一度も実家出ないのもどうかな、と思って。今はお姉ちゃんが子供産んで一時的に実家に入り浸ってるのもあるけど、人に気使わずに自由で優雅な生活、っていうのもいいもんだね」

と、極めて余裕だ。

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慶応時代の彼氏は商社マンだった。南麻布に住む彼女と彼は必然的に六本木や麻布十番などで会うことが多く、そもそもの出会いも西麻布で彼女の友人が開いた合コン的な飲み会であった。彼が駐在に出るタイミングで、自分自身も別の商社の内定を持った状態で彼についていく義理などない彼女は、さっさと別れを決め、次に付き合ったのは証券会社に勤める東大卒の男だった。彼女のアレルギー性の持病が悪化した時の彼の対応に絶望し、就職して半年で別れた。次の彼氏は医学部の大学院にいる男だったが、なぜか彼のパスポートを実家の母親が管理していることに動物的な勘で危機感を感じ、彼女がロンドンに駐在に出たタイミングで別れた。

彼女の男遍歴もまた、実に港区的な豊かさに溢れていて、それはもちろん、彼女が港区に生きるにあたって全く見劣りしないルックスの持ち主であることや、Fカップであることや、女子校時代の友人らも含めて大変に家柄が良く、また家柄が良い人に出会うチャンスに恵まれていた環境などが大きく関係している。

 

そして彼女はそこに対してなんのプライドも持っていなかったかというとむしろ逆で、港区民的な選民意識と、あえて弱者を目に入れない心の健全さを合わせた、状況を当然のものとして受け入れるしっかりした自尊心を持っていた。

しかし、彼女にはそういった港区的な一面の他に、慶応程度なら髪を振り乱さなくても入れる頭脳と、割としっかり物事の本質をついたような視点と、最低限よりは随分と上をいく教養も持っており、それは正直、彼女にとっては良いことなのかどうか、私にはよくわからなかた。少なくともそれらは、彼女をこの時代の港区的な価値観から随分疎外感を感じさせるに十分なはたらきをしていた。

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