「日本有線大賞」は終わっても「紅白歌合戦」は生き延びる単純な理由

マスの時代はとっくに終わっている
三浦 文夫 プロフィール

音楽の「平準化」という落とし穴

最後に、本稿のテーマである音楽特番の今後を考える上で、私なりに音楽産業全体の展望を述べておきたいと思います。

YouTubeによる音楽聴取はメジャー、マイナー、プロ、アマ、時代などのジャンルに縛られず、ランダムに再生されます。大舞台も妖しいライブハウスも、蛍光灯で照らされたようなのっぺりと平準化された世界として画面に表示されます。便利だし、いつでもどこでも自分の好きな曲を取り出せますが、魂を揺さぶられるような体験をすることはほとんどありません。

 

一方、リアルな音楽体験であるライブコンサート市場は順調に拡大しており、2016年には音楽ソフト市場を超える3100億円規模に達しています。ただ、市場拡大を牽引している「フェス」にアイドルグループの出場が相次ぐなど、より幅広いクラスタを引き込もうというテレビ的発想に陥り出している危うさも感じます。多様性と平準化(によりエネルギーが失われること)は紙一重なのです。

最近では、Google Home、Amazon EchoといったAIスピーカーの登場、ハイレゾ、立体音響、アナログレコードなどのオーディオメディアに関心が集まっています。2020年ごろまでには、サブスクリプションサービス(曲ごとではなく、利用期間に応じて対価を支払う方式、月額制など)の本格普及など、音楽産業も大きな構造変革を迎えるでしょう。

そんな変化のうねりのなかで、2013年に結成されたWONKのように、既存の方法論にとらわれずグローバルな視点で独自の感覚を研ぎ澄ませているアーティストたちが登場し始めています。音楽産業には、平準化の落とし穴にはまることなく、新しい才能の芽を伸ばすことができるようなダイナミズムを取り戻してほしいと願ってやみません。