話題記事「深セン感動26歳」への中国共産党と人民たちの驚きの反応

肯定、否定、入り乱れ…
安田 峰俊 プロフィール

在外中国人がみせた怒り

いっぽう、中華圏の情報伝播をナメてはいけない。『参考消息』が訳した「日本が中国に完敗」記事は、ポータルサイト『新浪』を通じて台湾など中国国外の華人圏にも伝えられた。さらに在外中国人や中国国内の反体制派が集う『墙外楼』や、米国カリフォルニアに本拠地を置く在外華人サイト『文学城』(いずれも中国国内から通常の方法では見られないサイト)でも全文が転載されており、どうやら北米華僑の世界にまで伝播しているらしい。

さらにネット上を探すと、華僑の手で中国語から重訳されたらしき「Japan 90 cried in the streets of Shenzhen :uncle who wake up, Japanhas "lost" in Chinese!」と題した英文記事も見つかる。実にカオスな事態が発生中なのだ。

そこで興味深いのは、中国国内のネット社会とは異なり、共産党当局の日常的なプロパガンダやネット言論統制を受けていない在外中国人たちの反応である。ちょっとキツい表現もあって恐縮だが、以下で紹介していこう。
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<『墙外楼』>

2017年12月15日00:40
このアホウは共産党からいくらもらったんだ?(略)。今の日本は未来の中国だ。区別があるとすれば、中国が落ち込む穴はもっとデカいってことさ。(略)

2017年12月14日11:37
中国の都市部の外見に騙されちゃいけない。共産党はそういう見た目だけカッコつけるやり口のプロなわけで、真の実力を比較しなきゃ。VRにしたって、安い以外に中国の魅力はないでしょ。質は悪いし。

2017年12月14日12:22
『参考消息』の翻訳だって?共産党が人民にたまわる精神的な回春薬かね。

2017年12月14日06:57
この日本の若者は中国のよい部分をたくさん見てそれを文章に書いたんだなあ。実にいいねえ。だって、もしも中国国内で(若者がこの文章と同じような筆致で)日本を褒めたらどんな目にあうかな。ふはは。

 

2017年12月14日22:40
繁栄を見るのはいいが、現地の庶民がどう暮らしているのかも見てから結論を出してほしい。他国に自分たちの合法性を認めさせることの根回しをするのが共産党の考えであり、やり方だ。(略)

<『文学城』>

2017-12-1712:37:59
中国国内では、カネがある人間だけが健康的で素敵な人生を送る当事者になれる。カネがなければ低端人口(底辺住民)さ。ニュースを見ればわかる話だ。

2017-12-1703:18:09
ぶっちゃけ、深センよりもいい(中国の)街ってなかなか探しづらいしなあ。

2017-12-1701:40:57
この文章の作者が本当に怒っているのは、マヒしている日本社会に対してでしょ。前世代のリーダーがすっと若者の活躍を押さえつけていて、中国みたいな活気がないっていう。

2017-12-1622:39:19
で、この子はなんで泣いてるの?

2017-12-1621:11:01
深センの不動産価格が高すぎて泣いたんだとおもったら、違うのか。

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「スゲえぞ、わが国」キャンペーンに乗って得意満々の反応(それ以外の意見がなかなか出しにくいからでもあるが)を示す中国国内と、冷ややかな視点で眺めている中国国外の華人ネット社会との対比が非常にあざやかだ。果たして真実はどちらにあるのだろうか。

ところで、習近平の腹心・蔡奇がトップを務めている北京市政府は11月上旬、首都に暮らす「低端人口(底辺住民)」の追い出しを掲げ、出稼ぎ者の貧困層が暮らす家屋を強制破壊して住民をマイナス5度の寒空の下へ放り出すという恐るべき政策を実行した。ネットに流れた撤去動画は、ナチスのユダヤ人迫害「水晶の夜」さながらの荒っぽさであった。

もともとカネや権力を持っている「オッサン」たちはさておき、社会でうまくいかずルサンチマンを抱いてしまうような「持たざる民」にとっての中国は本当に理想の土地なのか――?

そんな問いへの答えは、北京市当局者が『北斗の拳』のモヒカンのごとく「汚物は消毒だ」政策を実行する様子を伝えた、上記の動画を見ればわかるかもしれない。