産後に夫を殺したくなる妻たちの告白

エリート高収入男性が愛されない理由
藤田 結子 プロフィール

高収入の「できる」男がモテる

絵美さんや知子さんのケースのように、なぜ女性たちは育児に関わろうとしない相手と子どもをつくる気になるのか。これには、中央大学・山田昌弘教授が指摘する「(仕事が)できる人がモテる」ことが関係しているだろう。

女性は成長する過程で、「できる男性」に魅力があるという価値観を「感情」として内面化する。その価値観に従って、自然に好きになる相手は、社会的に成功する資質をもっている可能性が高い男性になりがちだ。

つまり、仕事ができる男性であれば、女性から選ばれやすい。つまり「モテる」ということだ。逆に、仕事能力がない「できない」男性は、女性から選ばれにくい。つまり「モテない」ことを示している (山田昌弘『モテる構造』ちくま新書、2016年、pp.122-123)。

実際に、30代男性の既婚率は、年収600万円以上は37.6%、300万円以上400万円未満は26.5%、300万円未満は9.3%であり、年収と比例している(内閣府「結婚・家族形成に関する調査報告書」2010年度)。

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産後は夫を愛せない

だがそんな高収入男性と結婚したとしても、妻たちは出産後、夫を愛せなくなる。

ベネッセ次世代育成研究所が出産後に夫婦間の愛情がどう変わるのかを調べたところ、妊娠期は、「配偶者といると、本当に愛していると実感する」に「あてはまる」と答えた割合は、74%で夫も妻も差はなかった。

しかし、出産後は「夫を本当に愛していると実感する」と回答する妻の割合は大きく減少する。子供が0歳のときは46%、1歳では37%、2歳では34%となり、妊娠期から40ポイントも減っている(ベネッセ次世代育成研究所「妊娠出産子育て基本調査・フォローアップ調査」2011年)。

この愛情の減少の原因の1つとして、「夫が育児に関わらない」ことが指摘されている。もちろん、高収入の夫に稼いでもらって、自分は専業主婦で家事育児に専念し、満足している妻もいるだろう。

 

だが、共働きをしている女性たち、とくにフルタイム勤務の女性たちから、「夫は仕事に邁進しているのに、自分ばかりが仕事と育児の二重の負担でつらい」という声がよく聞かれる。彼女たちは、「夫には稼いでほしい」と思いつつも、自分だけが両立で葛藤する毎日に納得がいかないようである。

亮さんや大輔さんのような仕事が「できる」男性の場合、これまで仕事第一にやってきたので、子どもが産まれたからといって、急に行動パターンが変わるわけではないのだろう。

とくに女性に人気の「夫の職業」――医師や銀行員、商社マンには長時間労働で、早く帰宅できず、平日に育児を(したくても)できない男性が多い。

女性側から見ると、子どもを産む前にキラキラと魅力的に映った夫の仕事熱心さが、子どもを産んだ後ではワンオペ育児を強いるむかつきポイントになるのだ。