正月飾りに秘められた驚きの科学~日本人にとって「結び」とは何か

世界でも類をみない精神文化と思想性
畑中 章宏 プロフィール

日常に遍在する「結び」の数々

額田の「結び」の追求は、縄文土器の文様、韓国の飾り紐「ノリゲ」、紐に結び目を付けて数を記述する沖縄の「藁算」やインカ帝国の「キープ」など民族的な結びから、犯罪者らを縄で縛る「捕縄術」にまで及び、これらが科学的知見から捉えられていった。

インカ帝国のキープについては、ハーバード大学の学生が解読に成功したことが話題になったばかりだが、額田もその複雑な構造と機能に早くから着目していたのである。

 

さらに大きな額田の業績は、科学捜査研究所からの依頼で、凶悪事件で用いられた結びの鑑定を行なったことである。

1968年(昭和43)の三億円事件でも、額田は、犯行に使われたカローラと同じ時期に盗難に遭ったブルーバードの紐結びの鑑定を行なってもいる。

個々人の「結び」の癖は犯罪捜査の重要な要素でもあり、人類史・民族史ともつながる歴史を秘めているのだ。

正月飾りはもとより、日本人なら日々の暮らしの中で、多種多様な「結び」に出会っていることだろう。これからは「結び」を目にしたとき、科学的な視点で見ることもできることを思い出してほしいのである。

〔PHOTO〕iStock