暴力と監禁と没収が日常だった…映画監督・小林勇貴の「壮絶半生」

『実録・不良映画術』を読んだか

ぶっ飛びの半生

「世の中には『理不尽な圧力』がたくさんあります。その圧力に抗いたいし、ものを言いたい…そういう気持ちを持ちながら、映画を撮っていますね。

僕自身も、人生を振り返るといろんな『圧力』を受けてきました。学生時代には、仲の良い友達が、突然不良の先輩に呼び出されて、因縁をつけられてリンチされるなんてことは日常茶飯事でしたし、理不尽な理由でカネを獲られることもありました。

高校を卒業してデザイナーになろうと思い、そのことを友達に語っても『なれるわけがない』『お前には無理だ』と、邪魔するように圧をかけてくる。で、その圧のなかに人の個性とか未来とかを取り込んで、押しつぶそうとする。

僕が育った富士宮は、そういう町でした。カネも、夢も、欲望も全部、周りの人や上の世代が『没収』しようとする。没収されたほうも、その理不尽に抗うんじゃなくて、また自分より下の者からなにかを没収しようとする。それっておかしいだろ、とずっと思っていたんです」

映画監督・小林勇貴(27)。今年11月、主演に間宮祥太朗を迎えた『全員死刑』が、「町山大賞」(映画評論家の町山智浩氏が、一年で最も優れた映画を表彰する賞)を受賞、また地元・富士宮の本物の不良たちを役者に起用した『Super Tandem』(第36回PFF入選)、『NIGHT SAFARI』(カナザワ映画祭グランプリ)、『孤高の遠吠』(ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリ)が各賞を受賞するなど、いま最も注目を集める若手映画監督の一人だ。

そんな彼が著した自伝『実録・不良映画術』で描かれる半生があまりにぶっ飛びすぎており、一部界隈で「ヤバすぎ…!」と話題になっている。

・小学校低学年の時、母が働いていたラーメン屋の店長に、原付の乗り方を教えてもらった
・敬語を使わないと竹刀でボコボコに後輩を叩くメガトン先輩の恐怖
・授業中に突然「コービー・ブライアント!」と叫んで隣の席のやつをぶん殴るタカノリクンとの友情

……など、まるで漫画の世界かと見紛うような話にあふれたこの一冊に衝撃を受けたわれわれは取材班は、恐怖を押し殺して、小林の“特襲インタビュー”を敢行。執筆の裏話、監督の半生、そして映画にかける思いを聞いた。

 

「仕掛けの森」

――……いきなり失礼な質問で恐縮ですが、この本に書かれてあることは、創作じゃないですよね?

「そんなに疑いたくなるような話がありましたか?(笑)」

――はい。「幼稚園のとき、弟と外で遊んでいると『ガキが昼間から遊んでんじゃねえ!』と隣りの家のオジさんがワンカップ瓶を投げてくる」、「市営団地に住む夫婦の喧嘩を止めにきた警察官が『邪魔するな!』とその夫婦にガソリンをかけられて燃やされた」…にわかには信じがたいエピソードが続出します。特に、「仕掛けの森」の話は衝撃的過ぎて、読んでトラウマになるレベルです。

「なるほど(笑)。未読の方に説明すると、僕の地元(静岡県富士宮市)に、『仕掛けの森』っていう場所があるんです。といっても、なにか仕掛けがあるわけではなく、地元の不良が誰かにリンチを仕掛けるときに使うからそういわれていた場所ですね。実は僕も最初は『仕掛けの森』と聞いて、気楽に『アスレチックとかがたくさんあるのかな』と思っていたんですが、『ここでみんなを殴るからだよ』と先輩に教わり、驚きました。

中学生の時、いつも竹刀を持っている“メガトン先輩”という不良がいたんですが、僕の友達がそのメガトン先輩に拉致されて、『仕掛けの森』でリンチされましたね。そこでリンチが行われすぎて、その辺りだけ草木が生えなくなったんですよ。リンチの最中に人をひきずったりするからで、野球部が練習前に運動場にかけるローラーみたいなものですね。それを人間でやるわけです。獣道ならぬヒト道ができていた。

不良の派閥争いのことなんかも書いているので、一部の人間の名前を部分的に変えたりはしていますが、基本的にはすべて実話そのものです。

『仕掛けの森』とかは、僕たちにとっては日常の風景だったんですよ。地元の高校を卒業して、デザイナー学校に入学するために上京したんですが、東京で一番びっくりしたのは、誰も拉致された経験がない、ということ(笑)。

どうりでクラスメイトと話が合わないはずだなと。地元の内側にいると、比べる対象がないのでわからなかったですね。上京して初めて、『あのときのアレって結構怖いことだったんじゃ……』って思い返すことがよくありました」