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私たちはどんな世界を生きているか〜終わりなき「対テロ戦争の時代」

2017年、何が・なぜ起きていたのか

リベラルな国際秩序が動揺している

2017年の世界は、アメリカのトランプ大統領の就任によって、幕を開けた。

冷戦終焉後の世界において、自由主義的な価値規範は、国際秩序の普遍的な基準となった。

しかし、今や新たな時代の潮目が訪れている。トランプ大統領の登場は、リベラルな国際秩序の動揺を象徴している。

もっとも、トランプ大統領がリベラルな国際秩序を動揺させた、と言うのは、正しくない。リベラルな国際秩序が動揺しているから、トランプ大統領が登場した、と言うべきだ。

トランプ大統領は、アメリカが普遍主義を標榜すれば、世界の秩序は安定発展する、とは考えていない。

変動する世界の中で生き残りをかけたがむしゃらな政策をとるのでなければ、アメリカ社会は溶解し、結局は国際秩序も溶解し続ける。冷めた現実感覚が蔓延する中で、トランプ大統領は生まれた、と言うべきだ。

巨視的に2017年の世界を鳥瞰するとき、とりあえずわれわれが共有せざるをえないのは、そのような厳しい現実認識だ。

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動揺する国際社会の中で、日本はどのように生き残っていくのか。国力の低下に直面し、生き残りをかけた戦略が必要となっているのは、日本のほうである。

実態ではアメリカに依存しながら、口先ではアメリカ批判を繰り返して気持ちを晴らす、そんな時代は、とっくの昔に終わっている。

アメリカとの関係を現実主義的に維持しながら、国際社会の協調的なプレーヤーとして行動することを両立させる姿勢が必要だ。

冷戦構造下の高度経済成長時代へのノスタルジアなどに浸るのではなく、現実の厳しい世界情勢を直視しながら、日本の将来も、考えていかなければならない。

 

終わりなき「対テロ戦争の時代」

2010年代の世界では、武力紛争の数も、犠牲者の数も、劇的に高まった。

「冷戦終結後」の武力紛争の激増の波がおさまり、国際社会の平和活動の努力が、徐々に成果を見せ始めてきたのではないかといった2000年代の楽観論は、過去7年ほどの間で消え去った。

この新しい傾向をけん引しているのは、中東である。この地域こそは、「アラブの春」以後に劇的に流動化し、「対テロ戦争」という新しい国際秩序の変動の震源地となっている。

確かに、1990年代に世界の武力紛争の増加の象徴であったアフリカ大陸も、依然として多くの武力紛争を抱え続けている。しかしその中心が、サヘル地域(サハラ砂漠の南側)を核とする帯状の部分である傾向は、2017年も続いた。

アフガニスタンのような南アジアの相変わらずの不安定と合わせてみれば、中東及びその外周部分が、世界の最も脆弱な地域になっていることは、明らかだ。

たとえば日本の自衛隊も海賊対策などで関りを持つアフリカの角のソマリアだが、AUのPKOミッション(AMISOM)の撤収が決まったところで、大規模なテロも起こり、不安定性が増している。西アフリカのボコハラムと並んで、東アフリカのアルシャバブの存在感は際立っている。

その他のアフリカ諸国に展開する国連PKOミッションは、トランプ政権からの圧力により、大幅な予算削減(規模縮小)の時代に突入している。国際的な平和活動によって維持されていた脆弱な平和は、今後、段階的に溶解していく恐れがある。