photo by gettyimages
# フィギュアスケート # エンタメ # オリンピック

本田真凛は本当に「ポスト浅田真央」なのか?

五輪出場に黄信号

日本のスポーツ報道のおじさんくささ

「オリンピックに向けて本田真凛選手を取り上げたいのですが、彼女について教えていただけませんか?」

今シーズン初めから、そんな問い合わせは今シーズン初めから、著者のところでも相次いでいた。それは彼女がグランプリシリーズ初戦、スケートカナダで5位に終わった後くらいまで続く。

「真凛ちゃん、オリンピックではどのくらいまで行けるでしょうか?」

そんな質問も、実に多く受けた。本田真凛はご覧のように、美しく、華のある選手だ。しかしオリンピックへの展望となると、今年の日本女子の出場枠は、2枠。まず出場できるかどうかがわからないですよ、と話すと、驚く人も多い。

「でも、シニアに上がってすぐの大きな国際大会で優勝したんですよね? オリンピックのメダルもあるんじゃないでしょうか?」

フィギュアスケートも、すっかり人気スポーツになった。小さな試合でも、アイスショーでも、どんどんテレビで放送され、たくさんの人々の耳目に触れる。しかし注目を集めるためだけの宣伝、報道も多いのだろう。試合の規模や価値、選手の実力など、一般の視聴者に勘違いされるような広まり方をするケースも少なくないようだ。

photo by gettyimages

本田真凛のシニアデビュー戦、USインターナショナルクラシックでの優勝は、素晴らしい成績だ。しかし同大会はグランプリ開幕前の、チャレンジャーシリーズの一戦でしかなく、トップレベルの選手が集結しているわけではない。長洲未来、カレン・チェンなどアメリカの五輪代表を狙う選手も出場していたが、トップ選手たちはシーズン初戦から全力では向かわない。シニア一年目の本田が優勝できたとしても、それで即、オリンピックでの好成績を期待できるわけではないのだ。

むしろこのころひそかに注目されたのは、USインターナショナルクラシックと同じ週に開催された、ロンバルディアトロフィーだ。ここで日本の樋口新葉が、順位は2位ながら総合得点で200点を軽々超えるスコア(217.63)を上げていたことのほうに、関係者は目を見張った。この時点では、前年世界選手権5位の三原舞依が五輪候補筆頭、そのあとに樋口か、本田か、というあたりが大方の予想だったから、シーズン初戦とはいえ、樋口がここまでのスコアを出したことは大きかった。

本田のほうは順位は首位だったものの、得点は198.42。ジュニアでは世界チャンピオンになったものの、シニアでの本田の評価はあまり高くないかもしれない、と、五輪出場に既に黄信号が灯っていたのだ。

それでも報道では、本田真凛優勝のほうが大きく扱われ、現場を直接取材していないワイドショー、週刊誌などのメディアでは「五輪でも活躍を期待!」と報じることになってしまう。

昨シーズンあたりから、本田真凛の扱われ方は少し異常だった。華があり、妹の本田望結が女優として活躍していることもあり、ジュニアのころから「ポスト真央」として期待されてはいた。それが昨年春(2016)、日本人として6年ぶりの世界ジュニアチャンピオンになったころから、ジュニア選手としては大きすぎるほどの注目を浴びるようになる。

昨夏のアイスショー、シニアの宇野昌磨や宮原知子が出演しているにもかかわらず、新聞で一枚だけ取り上げられた写真が本田真凛だったことがある。大きく扱うべき選手のランキングとして、浅田真央、羽生結弦の次に本田が位置している、というのだ。

同年冬、浅田真央が調子を上げられず、全日本で12位。今年の春には引退を発表する、その流れの中で、浅田に代わる女子のスターとして、本田のポジションは飛躍的に高まってしまった。

 

オリンピックに向けていちばんの注目株として取り上げられ、知名度は女子選手で最も高く、フィギュアスケートに関心のない層にまで広がっていった。今年10月、シーズン序盤のジャパンオープンでも、昨季の日本女子一番手・三原舞依より本田の扱いのほうが格段に大きいことが、「さすがにおかしい」と、記者、関係者の間でも話題になったほどだ。

彼女が素晴らしい資質と可能性を持った選手であることは、確かだ。しかし現在の日本選手の中で飛びぬけて実力者、というわけではない。日本からはたったふたりしか出場できないオリンピック、代表を逃したらどうするつもりだろう、と首をひねってしまうのだが、そんなことは取り上げる側はお構いなしだ。

今、人々の注目を集められばそれでいい。羽生結弦の人気も大きいが、やはりフィギュアスケートには、女の子のスターが欲しい。待ってました、とばかり、特定の選手を持て囃す……この国のスポーツ報道、広告業界などの、実におじさんくさいところをこれでもかと見せつけられた気がした。