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発達障害と性のリアル~「ノー」が言えない、デート3回で興味失う…

当事者たちと語り合ったこと

「性やセックスについて話せる場がないんです」

発達障害の当事者から、こんな言葉がありました。

「発達障害の当事者の集まりで、恋愛や結婚の話はできるけど、性やセックスについて話せる場がないんです。また、話そうとしても、トラブル防止の観点から却下されてしまうこともあります。

一方で、性について語られる場では、発達障害について理解されていないなと感じることも多い。性の多様性を尊重するのであれば、発達障害への理解もすすめてほしいと思います」

 

筆者は、性の健康教育についての講演や勉強会、情報発信を行う非営利団体・NPOピルコンの代表です。

昨今、「発達障害」について社会的な関心が広まっており、保護者や教育関係者向けの情報も増えていると私も感じています。一方で、多くが「子どもの発達障害」がテーマであり、大人も含めた「発達障害と性」をテーマとする当事者主体の勉強会の機会はまだまだ少ないのが実情です。

そのため、これまでにも「『発達障害と性』をテーマにする勉強会を開いてほしい」と、当事者やその支援に関わる方から複数回要望をいただいたことがありました。

そんな中、私たちピルコンの活動で今年からボランティアをしてもらっているAさんが発達障害の当事者であったこともあり、今回、当事者の方々をお招きして、一緒に「発達障害と性」をテーマに、生の声をお伺いすることになりました。

[写真]当日の様子(写真提供:染矢明日香)当日の様子(写真提供:染矢明日香)

そもそも、発達障害とは?

厚生労働省が発信する「みんなのメンタルヘルス」(http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html)によると、<発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害などが含まれ>るとされます。

これらは、生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点で共通しています。同じ人に、いくつかのタイプの発達障害が重なっていることも珍しくなく、そのために同じ障害がある人同士でも、まったく似ていないように見えることがあります。

<個人差がとても大きいという点が、「発達障害」の特徴といえるかもしれません>と同サイトには書かれています。

診断基準にも改定があり、たとえば2013年に改定されたアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5では、アスペルガー症候群や広汎性発達障害は、自閉症スペクトラム(ASD)に含まれるなど、分類や呼称、表記が変更されることもあります。

さらに、前述の厚労省サイトでは、

<発達障害は成長するにつれ症状は変化し、人それぞれに多様化します。思春期や青年期になると、自分と他の人との違いに気づいたり、対人関係がうまくいかないことに悩んだりし、不安症状やうつ症状を合併する場合があります>

とも説明されています。

実際に一緒に勉強会を企画したAさんも、

「発達障害は、何通りかに分類されているが、体系化することは難しい。発達障害を理解するためには、当事者の方の話を聞いてほしいし、その当事者の話が発達障害を代表しているわけではなく、あくまでも『こういう人もいるんだ』と理解してほしい」

と語ってくれました。

今回は、4人の発達障害の当事者から、その特性から性について難しいと感じる点や、周囲の人に「こうしてほしい」という点をそれぞれ聞きました。

人との距離感がわからず「ノー」と言いづらいAさん

様々な集まりに顔を出したり、発達障害についてのイベントを開催したりとエネルギッシュで社交的な印象の女性Aさん。今は接客業をしています。

ADHD(注意欠如・多動性障害)と自閉症スペクトラムの診断を受けていますが、以前の診断時には「典型的なアスペルガー症候群の人に比べたら、全然気にならない程度ですよ」と言われたこともあるといいます。

診断の方法が医療機関によって異なるために、「100人いれば100通り以上の傾向がある」ともAさんは語ってくれました。

Aさんが自覚されている発達障害の特徴として、ADHDの側面としては、忘れ物やミスが多く(そして、忘れないようにメモをとったことさえも忘れてしまう)、それを注意されても、「どこかに非がある」ことは理解できても、何が悪くてどう改善した方がいいのかわからないことがよくあり、自己否定に陥ってしまうそうです。

また自閉症スペクトラムの側面としては、こだわりが強く、特定のものに依存しやすい傾向があり、それは人間関係にも当てはまるといいます。

「人との距離感がうまくわからなくて、本当に信頼できるのはパートナーしかいないんです。なので、特定の親密な人との関係性で過度な依存や仲たがいがあると、私生活のバランスを大きく失ってしまうことがよくあります」(Aさん)

また、Aさんの自身の活動的な面については、「常に誰かと会うなどの予定を詰め込み過ぎてしまうといったように、動いていないと自尊心が保たれない」ということで、様々な知り合いや居場所を意識的につくることで、特定の人だけに依存しないように工夫しているということでした。

今回のテーマである、「性」についての困りごととして、会話の中で言葉を文字通り受け取ってしまう傾向があり、そのせいで過去には、学校でクラスメイトから性的な嫌がらせをうけたこともあるといいます。

たとえば、Aさんは「自慰行為をしてみろ」と言われ、他のクラスメイトがいる前で自分の性器を触ったこともあるそうです。

「当時は嫌だったけれど……。相手からの要求を断ることができなくて、相手に従うことで自分を守ってきたんです。周りの人は誰も止めてくれませんでした。

自分の意見がうまく言えなかっただけなのに、学校では多くの人から『変質者』『気持ち悪い』というレッテルを貼られてしまいました」

と、Aさんは当時を振り返りました。

「私にとって『ノー』と言ったり、断ることはとても難しいこと。『自分を大切に』なんて言うけど、嫌なことを『嫌』と言うことがどうしても難しい子や、『助けて』と簡単には言えない子がいることも知ってほしい」(Aさん)