人口が増え満足度も高い「中都市」の暮らしは、本当に幸せなのか

「札仙広福」は注目されているが…
貞包 英之 プロフィール

「普通の中都市」への変貌

ただし中身をみれば、中枢都市のあり方に変化の兆しもみられる。

まずかつての都市経済を支えた支店の集積が揺らぎつつある。1990年代に支店は広域中枢都市でも減少し始め、その傾向はなお続いている(日野正輝「経済センサスによる主要都市の支店集積量の把握と問題点」『商学論集』81(4)、2013年)。

同時に卸機能の衰退も目立つ。地域ブロックの経済が下降していることで卸機能も縮小しているのであり、実際、仙台を例とすれば、卸売業の年間販売額は1991年に10兆円に上り詰めて以後、2014年現在は6兆円台にまで急落している(『仙台市統計書』)。

こうして広域中枢都市は、地域ブロックの生産や流通を支配することから富を吸い上げる力を弱めているといえるが、それを埋め合わせているのが、活発な都市内消費やサービスである。

たとえば仙台では昨年駅前にパルコやエスパルが増館したことに加え、郊外での大規模店舗の進出も続いている。

たしかに不況のなかで小売業の販売額も近年停滞傾向にあるが、その減り幅は卸売に較べると小さく、結果として卸売との比は1974年の9.83倍から2014年には5.42倍にまで縮まっている。

小売業が相対的に好調なのは他都市でも同じである。

2007年から2014年へと小売業年間商品販売額は全国で90.7%と急落したが、仙台市の97.3%を筆頭に、札幌市94.9%、広島市92.8%、福岡市91.8%と、「札仙広福」では平均以上の健闘がみられる。

こうして広域中枢都市は、地域ブロックの生産を支配し、情報や商品を送り出す「中枢」から、内側での活発な消費によって維持されるいわば普通の「中都市」に徐々に変貌している。

他の都市に較べ事業所向けのサービスもなお多い――たとえば広告業の従業者の比率は21政令指定都市のなかで福岡2位、仙台4位、広島5位、札幌7位である(経済センサス)――が、それでも個人消費に活路を見出し「札仙広福」は地域での存在感を高めているのである。

 

住民の満足度は高い

ではこうした中都市の繁栄は望ましいといえるのだろうか。

筆者は基本的にはそうであると考える。なぜならまず地方中都市では、他の地域に較べ満足度の高い暮らしが送られていることが窺えるからである。

事実、仙台都市圏と宮城県の他の市部、郡部に分け、自分の生活に対する評価を五段階で調査したところ、仙台都市圏在住者では「総合的に見て、今の生活に満足している」、「政治や社会に満足している」、「転職したくない」「総合的に見て、現在住んでいる地域の現状に満足している」などで有意に肯定的な回答がみられた(居住地に加え年齢、学歴、性別、職業、世帯年収、結婚や子供の有無、子どもの有無のなかからステップワイズ法で説明変数を選択、P<0.01水準、n=1610)。