ユニクロに「仁義なき戦い」を仕掛けたZOZOの勝算

いったい何が起きているのか
久保田 大海 プロフィール

(2)「ユニクロ vs. ZOZO」の仁義なき戦い

ではベーシックアイテム市場で競合するのは誰か? もちろん柳井正が率いるファーストリテイリングだ。ユニクロとGU(ジーユー)の国内売上高を合わせれば1兆円に迫る、ベーシックアイテム市場の巨人である。

これまでユニクロが成長してきた軌跡は、アパレル業界におけるベーシックアイテムの進化の歴史そのものだ。

1994年に広島証券取引所に上場を果たしてから大量出店を続け、猛スピードで売上を伸ばしていく一方で、事業の多角化に挑戦した。しかし、失敗も多かった。1997年から1998年にかけてスポーツウェア専門の「スポクロ」、ファミリーカジュアル専門の「ファミクロ」を立ち上げるも、すぐさま撤退。今や知る人も少ない黒歴史だろう。

ユニクロが大ブレイクするきっかけになったのが、1998年に発売した1900円のフリースだ。その年の目標だった200万枚を完売すると、1999年は850万枚を売り上げて東証一部に指定替え、2000年にはカラーを51色に広げて2600万枚のフリースを売り上げる大記録を打ち立てた。

しかし、その後は2002年に「SKIP(スキップ)」というブランド名で野菜の販売を始めるなど迷走し(2004年に撤退)、再び黒歴史に名を刻んだ。

大きな転機となったのが、2003年に素材メーカーの東レとの共同開発で商品化した「ヒートテック」だ。

ユニクロ ヒートテックPhoto by Gettyimages

ユーザーテストを重ねて年々改良をくわえ、ついに「暖かさ(アクリル)」「肌になじむ保湿性(レーヨン)」「吸水速乾性(ポリエステル)」「フィット性(ポリウレタン)」の4つの素材を絶妙なバランスで組み合わせた商品が完成した。

2007年に行った「ヒートテック」のキャンペーンが大成功すると、2000万枚が売れて大ヒット。2004年にすでにヒットしていたカシミアセーターとともに、ユニクロがベーシックウェアのリーダーであることを決定づけた。

 

その後もユニクロは「素材」の機能性を重視した商品展開を続けた。男性向けの「シルキードライ」、女性向けの「サラファイン」、さらにそれらを統合した「エアリズム」、驚くほど軽くて暖かい「ウルトラライトダウン」など、次々とヒットを飛ばしてきた。看板商品「ヒートテック」の累計販売枚数はいまや10億枚(2017年9月現在)である。

要するに、ベーシックアイテム市場において、最も重要なキーとなってきたのはハイスペックな「素材」だったのだ。

ところが、である。ZOZOスーツとともに、ZOZOが挑むベーシックウェアの機能性は、正確な「サイズ」でつくられたオーダーメイドによる「究極のフィット感」だ。これは「素材」でベーシック帝国をつくりあげてきたユニクロに対する、明らかな挑戦状だろう。

「素材」から「サイズ」へのゲームチェンジを仕掛けるZOZOに対して、ユニクロはどう動くのか? ベーシックアイテム市場をめぐる両者の直接対決が始まろうとしているのだ。

ユニクロも手をこまねいているわけではない。2015年からセミオーダー感覚で選べるシャツなどを発売し、従来のS・M・Lといった基本的なサイズ展開に、さらに裄丈や首回りなどに細かいサイズを設けて展開している。

2017年現在、男性向けのシャツは全828通り、女性向けのジャケットは全2,640通りだ。「情報製造小売業」を標榜するユニクロしかできない芸当だろう。

シャツやジーンズなどの特定のベーシックアイテムでは、フィット感による「快適な着心地」が好まれるのは間違いない。前澤社長が言う「カッコいいサイズ感」を求める人がどれほどいるかが課題になりそうだ。そこに潜在的な顧客がいれば、ZOZOはユニクロと互角に戦えるのかもしれない。