「バノン来日公演」4万8600円払って行ってみたら、ズッコケた

大手メディアが報じなかった裏側
現代ビジネス編集部 プロフィール

都合10分ほどのスピーチが終わると、バノン氏はいったん舞台袖に設えられた控え室へ引っ込んだ。「バノン・パッケージ」を購入していない参加者は、ここで退室となる。30人ほどの参加者と、この日登壇した関係者が会場に残され、談笑を続けた。しかしその後、待てどもバノン氏が再び姿を現す気配はない。

3万円の「バノン・パッケージ」は「バノン氏との交流レセプションへ参加できます」という触れ込みだったはずだ。質問は難しくとも、せめて握手の一つくらいさせてもらえないと割に合わない。

不安に思った筆者は、バノン氏の遅刻で予定が大幅に狂ったのだろう、明らかに憔悴した表情を浮かべながら立ち働いていた前出の「J-CPAC実行委員長」に尋ねてみた。

「あの、バノンさんはこの後、会場に戻られるんですか?」

すると実行委員長は筆者の目をしかと見て、厳しい表情で、

「その予定です!」

と断言した。

 

しかし、このやり取りから数分も経たぬうちに、冒頭で述べた光景が繰り広げられたのだった。控え室から出てきたバノン氏は、側近たちに四方を固められつつ足早に会場を横切り、そのまま去っていったのだ。

「J-CPAC」公式サイトにはこう書かれている。

〈バノン・レセプションは特別会場にてバノン氏と個人的な交流を深めていただける、極めて貴重な機会となっております〉

しかし、そんな「バノン・レセプション」にバノン氏は姿を見せなかった。一般参加者との差分3万2400円は、なんだったのか——。

"ブライトバート"日本進出の可能性

翌17日の日曜日、バノン氏は木村太郎氏・小川榮太郎氏とのセッションに登壇、夕方にマスコミ向けの会見も実施した。さらに18日夜には、希望の党前代表の前原誠司衆院議員が個人的にバノン氏と夕食をともにしたようだ。

先にも述べた通り、本稿はバノン氏の主張の中身が妥当かどうかにはあえて立ち入らない。しかし、その後の各メディアの報道ではほとんど触れられていない事実が一つだけあるので、最後に示しておこう。

バノン氏・木村氏・小川氏のセッションで最も会場が沸いた瞬間。それはバノン氏が、

「”ブライトバート・ジャパン”を作りたい。その時はぜひ協力してください」

と聴衆に呼びかけた時だった。

トランプ大統領の誕生後、”ブライトバート”には欧州進出の噂が立った。今年2月には、フランス版の設立を阻止するため、フランスのある学生が”breitbart.fr”などのドメインを先回りして取得した、とも報じられた。

政権を去ったことで、トランプ大統領に対するバノン氏の影響力は低下した、といわれる。だが、バノン氏が会長を務める”ブライトバート”は、経営状況を一切公開していないとはいえ、依然として世界有数のウェブニュースサイトとして米国内では強大な世論形成力を誇っている。

現在のところ、”breitbart.co.jp”は空きドメインとなっているが、”breitbart.jp”はすでに何者かが取得したようだ。リップサービスの一種かもしれないが、もしかしたらバノン氏は、日本を「新たな市場」として虎視眈々と狙っているのかもしれない。日本でも本格的な「右派系ウェブニュースサイト」が誕生する日が、近い将来やってくるのだろうか。

<文責/現代ビジネス・臼杵明裕>