「バノン来日公演」4万8600円払って行ってみたら、ズッコケた

大手メディアが報じなかった裏側
現代ビジネス編集部 プロフィール

混乱もなく、セミナーは淡々と進んでいく。バノン氏が登壇する時刻が近づくにつれ、着々と席も埋まってきている。予定では、17時45分にバノン氏が登壇、スピーチを行うことになっているのだが…。

直前のセッション「アジアの平和を考える」が終了した直後、「J-CPAC実行委員長」と紹介された男性が壇上に上がり、やや焦りの色を浮かべつつこう述べたのだった。

「バノンさんは現在、到着が遅れておりまして、この後18時30分より行われる『バノン・レセプション』の冒頭にスピーチをしていただきます。『バノン・パッケージ』をご購入でない方も、このスピーチのみお聞きいただけますので、どうぞ隣の会場へご移動をお願いいたします」

 

遅刻とドタキャンは来日著名人の常。この程度のことは皆、ある程度は予想していたはずだ。ぞろぞろと隣室へ移動する。

隣室のレイアウトは立食形式で、小ぶりの舞台が設えられ、ケータリングのビュッフェもある。ウーロン茶を飲みつつ、バノン氏の到着を待つ。筆者はそもそも、保守派の識者と交流を深めたくてこの場にいるわけではないので、正直、手持ち無沙汰である。

まだか?バノンは本当に来るのか?もうすぐ予定の時間から1時間が経とうとしている。会場も明らかに焦れ始めた…。

ようやく到着、しかし…

そのとき。

「スティーブ・バノンさんが到着されました!」

アナウンスと間を置かずして、後方の扉が開け放たれる。すると銀髪を後方へ撫で付けた、いつものスタイルのバノン氏が姿を現した。ハイヤーを降りるなり急いでこのフロアへ向かったのだろう、黒いコートを脱ぎもせず壇上へ向かうと、通訳の準備も整わないうちに話し始める。

このスピーチ、また翌17日の講演・会見でバノン氏が述べた具体的内容については、すでに新聞各紙やテレビ各局が報じている通りだ。

後日、特に大きく取り上げられたのは、「トランプ大統領に関するフェイクニュースを流した」メディアとして米CNN・英BBCなどとともにNHKを挙げたこと。そのほかには、「TPPはアメリカに対する(他の加盟国の)『タダ乗り』ではないか」「自由主義政権下では、大手リベラルメディアが政権を攻撃する。これは中国を利することになる」など、トランプ大統領と同じ主張の繰り返しがほとんどだった。

ただ、内容の是非はともかく、抑揚に富みながらも落ち着いた低い声で明瞭に話すバノン氏が、演説の才を持ち合わせていることは、短いスピーチでも十分に伝わった。「トランプ大統領を当選させた男」の二つ名は伊達ではない。

引っかかったのは、バノン氏が最後に「また明日お会いしましょう」と口走ったことだ。ん? 今日はもう帰るつもりなのか……?