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「バノン来日公演」4万8600円払って行ってみたら、ズッコケた

大手メディアが報じなかった裏側

バノン、来襲

「スティーブ・バノンさんが会場を出られます! みなさま盛大な拍手でお送りください!」

え?もう帰っちゃうの……!?

飲み物を片手に談笑していた参加者はその刹那、あっけにとられた。しかし一瞬ののち、気を取り直したように拍手が巻き起こった。

着古したチノパンに黒いジャケット、これまた黒いコートといういでたちのバノン氏が、片手を上げ、足早に会場の端を横切っていく。鋭い視線を光らせながら随行する、短髪の屈強そうな白人男性たち。バノン氏が会長を務める、米国の「大手右派系ウェブメディア」”ブライトバート”の関係者だろうか。

その夜、バノン氏が私たちの前に姿を現したのは、正味10分ほどのわずかな時間のみだった。詳しくは後述するが、筆者はこの日、米トランプ大統領の「最側近」といわれるバノン氏の謦咳に接することを期待して、つごう5万円近い費用を支払っていた——。

スピーチするバノン氏

12月16・17日の2日にわたり、住友不動産渋谷ファーストタワーで行われたイベント「J-CPAC」。” Japanese Conservative Political Action Conference”の略で、日本語に訳せば「日本の保守政治行動会議」となる。

そもそも「CPAC」とは何かというと、米国で毎年2月〜3月に行われる保守政治系の一大イベントである。1973年の開始から徐々に規模を拡大し、現在では全米から1万人以上の参加者を集めるという。

2017年はワシントンDC郊外のナショナル・ハーバーで2月22〜25日に実施され、トランプ大統領が演説を行ったほか、ペンス副大統領、トランプ大統領の娘イヴァンカ氏ら、現政権の重要人物も次々に登壇した。米国保守陣営の錚々たる大物たちが万雷の拍手で迎えられる様子は、スターやアイドルのコンサートさながらだ。

2017年の本家CPACで演説するトランプ大統領(Photo by gettyimages)

この「CPAC」を日本でも開催し、保守の立場から国際問題を議論しよう、というのが「J-CPAC」の趣旨であるらしい。11月の某日、SNS上でこのイベントの存在を知った筆者は、さっそく公式サイトに飛び、内容を確認して驚いた。

「トランプを勝利させたスティーブ・バノン氏緊急来日」「特別チケット『バノンパッケージ』好評発売中」

との文字が踊っていたからである。少なくともこの時点で、バノン氏の「来日公演」を報じている日本のメディアはなかった(氏は今年11月にも一度来日しているが、一般向けの講演はしていない)。

それだけではない。個別の説明は省くが、本イベントには百田尚樹氏、ペマ・ギャルポ氏、石平氏、小川榮太郎氏、木村太郎氏、金美齢氏、田母神俊雄氏、佐藤正久氏(順不同)と、いわゆる日本の「保守の大物」と目される著名人が一堂に会するというではないか。登壇者には、元幸福実現党党首のあえば直道氏の名前もある(あえば氏がその後語ったところによると、米国の「CPAC」関係者と折衝を行い、「J-CPAC」の開催を主導したのは同氏だという)。

 

さらに驚かされたのは参加費用だ。まず「スティーブ・バノン氏との交流レセプションへ参加できます」「全てのセッションでVIPシートへご案内します」とある「バノン・パッケージ」が税込3万2400円也。「日米仮想通貨サミット」のチケットも別売りで同額だ(ビットコイン決済にすると3割引)。

一方、各日程のメインセッションを聴くためのチケットは別売りになっており、2日間の通しチケットが税込1万6200円、各1日ずつのチケットがそれぞれ同1万800円

「バノン・パッケージ」と通しチケットを合わせて購入すると、総額4万8600円と、この手のセミナー参加料としては、決して安くない金額である。2018年4月にさいたまスーパーアリーナで久々の来日公演を行う世界的人気歌手、ブルーノ・マーズのS席チケットでさえ3万5000円だ。

だが、就任1年足らずで解任されたとはいえ、トランプ大統領の元主席戦略官・上級顧問にして今なお側近といわれるバノン氏と、直接言葉を交わせる可能性のある機会はそうそうあるまい。背に腹はかえられない。

筆者はこうして「会いに行ける」世界的な右派著名人のバノン氏と、日本のウェブメディア関係者として初めて握手を交わさんと「プラチナチケット」を握りしめ、寒風吹きすさぶ渋谷へ向かったのだった。