結局、世界を変える通貨は「電子マネー」「仮想通貨」のどっちか

ビットコイン価格が乱高下するなかで
野口 悠紀雄 プロフィール

仮想通貨か電子マネーか

日本の電子マネーはこのような状態だが、その半面で、日本にはメガバンクが仮想通貨を発行する構想がある。

送金コストは、多分ゼロに近くできるはずである。そして、誰でも利用できるものになる。したがって、最初に述べた3つの条件を満たす。しかも、電子マネーとは違ってブロックチェーンを用いて運営されるので、転々流通するマネーとなる。

日本で電子マネーが普及しなかったのは、ATMが普及して、現金が簡単に利用できるからだ。

しかし、いまは電子マネーで中国に遅れをとっている。もし銀行の仮想通貨が実現すれば、今度は日本がリープフロッグして、逆転することが可能かもしれない。

当初は、2017年中に一般の人が利用できるようになると報道されていた。ただし、その後の進展は遅れているようだ。

 

仮想通貨の可能性は、スウェーデンにもある。ここでは、中央銀行が独自の仮想通貨発行する可能性だ。エストニアでもそうだ。

マイクロペイメントを可能にするという点では、以上述べた電子マネー、メガバンクの仮想通貨、中央銀行の仮想通貨に、大きな違いはない。しかし、社会に与える影響では、電子マネーと仮想通貨は大きく違う。

メガバンクの仮想通貨は、銀行のシステムを使うという意味で、電子マネーと同じだ。しかし、中央銀行が仮想通貨を発行すると、銀行システムに与える影響や個人のプライバシーの点で、大きな違いが生じる。これについての詳細は、拙書『入門 ビットコインとブロックチェーン』(PHPビジネス新書)を参照されたい。

中国はいかなる通貨体制を選択するのか?

以上で述べたことに関して、動向が最も注目されるのは中国だ。

中国政府は、もともとビットコイン型の仮想通貨に対して敵対的な態度をとっていた。

13年12月には、中国人民銀行は、中国の金融機関がビットコインを扱うことを禁止した。これは、人民元安への不安で中国からの大規模な資本逃避がビットコインを通じて起きたことへの対策ではないかと考えられている。

17年の9月には、仮想通貨を用いる資金調達であるICOを禁止した。

さらに10月には、中国人民銀行がビットコイン取引所の閉鎖を命じるという強硬策に出た。この結果、それまでビットコインの取引で世界最大規模を占めていた中国からの購入は、ほとんどゼロになったと考えられる。

ところが、アリペイなどの電子マネーに対しては、これまでのところ中国政府は抑制的な政策はとっていない

これは、アリペイが伝統的な銀行システムを利用する電子マネーであり、ビットコインのように中国の金融政策に攪乱的な影響を与えるようなものではないとの認識によると考えられる。

ただし、この方針が今後も続くは保証はない。実際、中国人民銀行は、ブロックチェーンを用いる独自の仮想通貨の発行を検討していると伝えられている。

それが、アリペイなどの電子マネーと共存することは考えにくい。かといって、すでに中国国民の大部分が使用している電子マネーを廃止することは極めて難しいだろう。

前回述べたように、中国には政府が支配する計画経済的要素と、民間企業が活躍する市場経済的要素が、矛盾をはらみながら混じり合っている。そして、政府の力はきわめて強い。この2つの衝突が、キャッシュレス社会の方向付けに関して大きな問題をもたらす可能性は否定できない。

通貨体制がどうなるかは、その国の基本的な性格を決める。中国の通貨が今後どうなっていくかは、中国という国家の基本に大きな影響を与えることになるだろう。