直木賞作家による「モテない男の子のためのモテ講座」

東山彰良×峰なゆか【特別対談】
小説現代 プロフィール

誇らしげに語るおじさん

 いやいや、著名人でモテない人なんていませんから。東山さんもモテてるんですよ。チャンスがあるときに踏み出してないだけです。サイン会に来ている人から携帯電話番号の書いてある手紙をもらったこととかないですか。

東山 うーん、ないことはないですね。

 そうでしょ、サイン会が終わってホテルに戻った際に、その電話番号にかけるか、かけないか、その差なんですよ。

 

東山 なるほど。あ、でも私、携帯電話もってません。

 え、ちょっと大丈夫ですか。

東山 だめですか、じゃあ買います。iPhoneⅩ買います。ところで峰さんは、どうしてモテについての研究を始めたんですか。

東山彰良氏(左)・峰なゆか氏

 それは、モテたかったんですよ。

東山 そのときは意中のターゲットがいたんですか、それとも不特定多数にモテたかった?

 不特定多数のほうです。小中高ずっと、モテて、いけてる女子グループのなかに入りたかったんです。

東山 あー、なるほど。思い返せば、僕もいけてなかったなあ。高校時代も大学時代も……。いけてる人に憧れるというのはわかりますね。住む世界が違いましたから。

僕はルサンチマンなのかな、皆をぶっちぎってやるぜじゃなくて、こっちならトップだ、というところを探してましたね。音楽でもパンクだとか。全力で「回れ右」をしていた。

 そうすると安心しますよね。モテない理由ができる。

東山 そうなんですよ。そうかといって同じグループの女の子にモテても嬉しくない。ウディ・アレンが何かの賞をもらったときに、「自分のような奴が入れるようなクラブには入りたくない」というようなことを言ってて、それはわかる気がする。

 安野モヨコさんの『ハッピー・マニア』の名言で、「あたしはあたしのことスキな男なんてキライなのよっ」というのがありますよね。

東山 あー、その感覚、同じです。

――(しばし沈黙)結局、解決しませんね……。

東山 そうだよ、そもそも最初から結論が出ない対談をしてるんだよ。どうやったらモテるかなんて答えがない、きっと。一生、僕たちは幻想を抱えながら生きていくんだよ。それで、その幻想を峰さんが一つ一つ潰していくんだと思うよ。

 ははは。モテ研究を始めた最初のきっかけは、世の中のモテテクが納得いかなかったことですね。当時は、男の話を頷いて「うんうんスゴイ」って聞いてあげる女がいいみたいなことが言われていたんですが、実際は「何言ってんだよ死ねよー」みたいにきついことも言える女のほうがモテてたりする。

東山 たしかに。

 わりと表面的で浅いところしか書かれていないと不満だったので、現実的に修正したかったんですね。モテるモテないって、もっと奥深い世界だよ、と。

東山 モテ道ですね。

 あと、個人的にはモテたいと思って努力する人は、男女問わずかわいいと思ってます。でも、モテテクを使う女ってあざといイメージが植えつけられてしまう。モテようと頑張ってる子はキュートだよってことを伝えたかったのですが、それはいまひとつ伝わっていないような……。

東山 いや、高齢化社会になっていくし、これからもっとアラフォー、アラフィフちゃんも人生を楽しめると思います。私も五十歳が近づいてきて、最近みんなかわいく見えるようになってきました。女性からはどうですか。

 たしかに最近、佐川急便の人とか、若い男の子には評価が甘くなっていきますよ。でも幸せなことですよね。若くてちょっとぶさめのださい女の子がおじさんと付き合って「かわいい、かわいい」と言われて褒められて。その子は同世代の男の子からは相手にされないけど。

東山 うわー。

 でもおじさんは誇らしげに周りに「俺いま二十五歳の若い子と付き合っててさあ」って語ったりする。

東山 うわー、いるかも。

 でも、それってお互いはウィンウィンになっています。聞かされる私としてはちょっと微妙なんですけど、ふたりにとってはニーズが合って幸せなんですよ。