直木賞作家による「モテない男の子のためのモテ講座」

東山彰良×峰なゆか【特別対談】
小説現代 プロフィール

「今夜の収穫」

――東山さんが各篇を書くうえで考えた男のモテとは、どのようなものでしたか。

東山 いや、考えてない。だって書き終わってから、タイトルも決めたし。ただ逆にモテないということを主に考えていたのかもしれません。有象くん無象くんは取り替えがきかなければならない存在だし、そうなるとモテるキャラクターとは対極的なポジションになります。けれども愛すべきキャラにはしたかった。

東山彰良氏

――有象くん無象くんは『アラサーちゃん』の「非モテちゃん」まではいきませんよね。

 うん、そうですねえ。やっぱり「大衆君」ですよ。偏差値50で取り替えがきく。

東山 そうですね。彼らは道ですれ違っても特にインパクトを与えることもない、一目見ただけでは覚えられない、そんなキャラクターを目指しました。だからセリフも有象くんと無象くんで、どっちが言ったか書いてないところもあります。

 うんうん、私もふたりの区別がつかないなあと思っていました。

 

――偏差値50の有象くん無象くんは、努力すれば先々の変化はありますか。

 もちろん。上下ともにありえますよね。たとえば有象くんが大学を卒業して優良企業に入ると、それだけで一気にモテ偏差値は上がります。実際にそういう人は多いと思います。ただ、最終的に私が考えついたのは、社会的ステータスではなく、才能なんだろう、と。

スクールカーストが高い人たちも、別に努力してそこにいるわけではないですよね。基本的には才能あるやつには勝てない。でも何かちょっとしたモテ技術はあるんじゃないかなあ。私はこの小説の中では「都合良男くん」が好きですね。キャバクラに行って女の子の手を握るだけで満足するって純情さ。

東山 ちょっとしか出ない彼を! 嬉しいなあ。名前を決めると、行動って決まっちゃいますよね。そういう意味では書きやすかった部分もあります。

 そう! そうなんですよ。キャラを名前にしちゃうシステムって便利。開発した時は、私は天才かもしれないって思いました(笑)。

東山 逆手にとって遊べますしね。一人だけ好きな人にはやらせられない純情な「ヤリマンちゃん」とか。僕も「温厚教授」が激怒するシーンは書きながら楽しかったです。ちなみに、ヤリマンちゃんはモテには定義されないですよね。

 そうですね。

東山 ただ、ガンガン女性に手を出していく男は、モテているという印象になる。経験談を聞いていると、おーすごいモテるなあ、と感じてしまう。でも女性は誰とでも寝る感じになると、グループ内の評価が下がるからおおっぴらには言えませんよね。それは男女の違いですか?

 女性もステータスがある男性、たとえば有名人とかと関係をもったりすると、わりとしゃべっちゃう人は多いですよね。

東山 ええっ、そうなんですか!

 言いますよ。

東山 有名人だったら、それは少し理解できるとして……。普通の一般人は……。

 でも高学歴好きの女性が「今夜の収穫」を披露しているツイッターもあるんですよ。

東山 ええっ。なんですか、それは。そんなグループがあるんですか。

 いやいや、そういう人たちがいるという話ですよ。

東山 ああよかった、そうですよね。いや、いつのまにそんな時代になったのかとびっくりしました。

 色々な専門分野があったりするんです。高学歴だとか、高収入だとか、芸人さんだとか。ちなみに作家さん専門のグループも存在しているんですよ。

東山 ええっ、嘘でしょ。そんな人に会ったことない。衝撃ですね。あと、教えてください。たとえば高学歴とか有名人専門のグループがあると、その中でコミュニティとヒエラルキーがあるわけですよね。

 そうですね。

東山 いくつかのグループをまたがって生きている「ヤリマンちゃん」がいたりすると軽蔑の対象だったりするんですか。

 そうですよ。やっぱり中では結構厳しい選別がありますし、「そんなヤラレマンと一緒にしないで」というような意見が出たりしますね。

東山 やっぱりあるんだ。えらいこっちゃ。いやあ僕は、やっぱり有象無象ですよ。