直木賞作家による「モテない男の子のためのモテ講座」

東山彰良×峰なゆか【特別対談】
小説現代 プロフィール

男女それぞれの醜い部分を描く

東山 この『女の子〜』はユーモア小説だと思っています。笑いを使って、大学生くらいの男の子たちがもっている女性に対する幻想をちょっと揺さぶる。だから色々なタイプの女性たちが出てきます。なにせ僕の貧弱な女性観で書いているので限界はあるのですが。

たとえば「ビッチちゃん」。その名前にひきずられた言動をさせながらも、ちょっと違う側面を描きたかった。ただ、結果的に自分が抱いている幻想から出れなかったな。登場する大学生たちの幻想は揺さぶれたかもしれないけれど、自分自身の幻想からは出ていない。でも、峰さんは容赦なくぶち壊しにかかりますよね。

東山彰良氏

 それは私が女だからですよ。男の人の内面を描きたくて、もっと踏み込みたいんだけど、どうしても難しい部分があります。東山さんが、そこを書いてくれたのでありがたいなあと思ったんです。

東山 褒められましたよー。

 女キャラも貧弱とは感じませんでしたし、きちんと書けていると思いました。
東山 ありがとうございます。ただ、「オラオラ君」のようなキャラを書きそびれてしまったな。あと自殺だとか、そこまでのシリアスな題材には行き着きませんでした。もっと徹底的に破壊にかかってもよかったかな。

――大学生だとまだそこまで行き着かなかったりしませんか?

 大学生だって自殺に行き当たるケースはありますよ。

東山 普段は福岡に住んでいて、大学で非常勤講師をしています。かつては手首に傷が見える子もいました。

 だからリアリティがあるんですね。東山さんが大学生をしていたのはずいぶん昔のはずなのに、どうして現代の大学生活にこんなに詳しいのか不思議でした。

東山 ただ、自分が今見ている大学生像よりは、有象くん無象くんはオールドファッションだと思います。

 あー、タバコも吸いますしね。最近っぽくないところもありますよね。

東山 そうなんです。たとえばむかし飲みに行ったことのある空手部の大学生、というくらいの感じで書きました。僕の受けもつ学生は毎年十八歳なんです。向こうの年齢はずっと変わらず、僕との年の差だけが毎年広がっていき、親子くらいになってきた。そうすると、どうしても共通するものがなくなっていきます。でも有象くん無象くんに関しては、まだ僕が理解できる奴にはしている。

 だから私もすっと有象くんたちに共感できたんだと思いますよ。

「普通の人」からモテたい

――作品を読んだ方と話すと、このタイトルだけに「モテ」の話題になります。その際に感じたのは、男はとにかく相手が誰であれモテたい。ですが、女性たちは特定の人、好きな人にモテたい、誰にでもではない、という意見を多く聞きました。

 本音を言えば、女だって誰にでもモテたいというのはあるんじゃないかな。男の人は逆に、誰でもいいわけじゃないと思いますよ。「一般的」ということで思い浮かべる顔についての男女差だと思います。女が想像する一般的だったり平均的な男は、ちょっと迷惑な、あまり好かれたくない感じの人なんです。

でも男の人が思い浮かべるのは、ちょっとかわいめな女の子だったりする。ちょっと告白されたいくらいの。その「ちょっと」の差なんですよ。女だって、ちょっとかっこよさげな男性からだったら好かれたいですよ。告白されたら嬉しいですよ。当たり前じゃないですか。

男たち おー、なるほどー。

 男性が女の人から告白されたけど、ちょっとキモいから無理とか言うときってあるじゃないですか。女の人が一般的に思い浮かべる男のレベルは、あれくらいなんですよ。だからお前ら想像してるとこ違うぞ、って思うんですよね。まあまあかっこよくて迷惑じゃない感じの人からだったら、女性だって誰からでもモテたいはず。

 

――とりあえず平均になればいいってことですか。

 でも平均って難しい。男も女も普通の人と言いながら顔面偏差値は60くらいをイメージしてる。年収などもそう。平均を目指すって、わりとハードルが高いと思いますよ。

東山 そうかあ。モテは個別で考えなければならないわけですね。経験値が圧倒的に足りてないこともあって、表現する言葉も出てこないですねえ。

 東山さんはエッセイでモテてこなかったって書いていましたよね。私も昔はモテなくて、どうやったらモテるんだろうってねちねち考え続けて研究したので、それを漫画に書こうと思ったんです。

東山 考察が徹底的だし、実践もしているから説得力がすごい。僕は漠然とモテたいなあって思ってはいたけど、全然研究も努力もしていない。それじゃダメですね。やっぱり具体的に動かないといけない。