教育費無償は19世紀から

では、一体どのようして、オランダはこのように教育に対して寛容な体制にたどり着いたのだろう。
オランダ政府によると、教育費無料に至る経緯は、19世紀にまでさかのぼる

1848年、オランダはそれまでの専制君主制から、自由主義的な立憲君主制に移行した。それに伴う憲法の改正が行われ、初めて「教育を提供する自由」が認められた。そこでキリスト教の信仰に基づく授業を行う学校(プロテスタントおよびカソリック)の存在が私立学校として認められたという。けれどここではまだ、私立学校への政府からの補助金はなく、学校は自力での運営を余儀なくされていた。

「私立学校にも平等に無料の教育を受けさせてほしい」という主にキリスト教系学校と政府の交渉は、憲法が再度改正された1917年でやっと決着したという。70年近くにわたる協議の結果、1917年より、公立・私立を問わずすべての学校が平等に無料で教育を受けられるようになったのだ。

逆に言うと、オランダは既に100年も「教育費無料」を継続していることになる。移民の増加などによって定期的に議論の俎上にのぼるが、依然として無料のままなのだ。

では一体、政府はどれほどの予算を教育にあてているのだろうか。

オランダ政府がまとめたデータによると、2016年には、教育文化科学省(Ministerie van Onderwijs, Cultuur en Wetenschap)は全教育部門に約290億ユーロ(同約3兆8千505億円)を配分した。内訳は初等教育に99億ユーロ(同約1兆3千145億円)と中等教育76億ユーロ(同約1兆91億円)。その他、職業教育、成人教育、科学教育に各40億ユーロ(同約5千311億円)が続く。この290億ユーロとは、オランダの2016年度の歳入(約3078億ユーロ)の、約9.4%にあたる。

また、OECDの公表している2014年度の数値を見ると、オランダの教育費はGDP比5.53%。日本は3.5%で、最低の数字となっている

学校の受給額は、生徒の数、年齢、教育の種類によって異なる。学生が多くなればなるほど、学校が受け取る額は大きくなる。2015年には初等教育の1人当たり平均6千500ユーロ(同約86万円)を使用することができたという。

保護者の学歴が低いと交付金が増える?

公立校・私立校ともに政府から、規模に応じて予算を得ることができる。ただし、なんと親の学歴次第で追加資金の交付もある。オランダの教育文化科学省によると、オランダでは親の最終学歴が低いほど、学校がもらえる交付金が増えるのだという。親の学歴が低いほど家庭での勉強サポートが少ないと判断され、学校への負担が増えるという理屈からきている。ただし、親の国籍や語学力などは問われない。

どうやって親の学歴を調べるのかというと、入学の際に親の最終学歴を申請する必要があるのだ。筆者も子供の就学手続きの際に夫ともども申告をしたが、それを卒業証明書などで証明する必要はなかった。

ここに至るまではオランダも試行錯誤を繰り返したようで、かつては外国人の親の滞在年数や子供のオランダ語力(ネイティブも含む)も調査・助成金審査対象だった時期もあるという。ただし、現在はそれらは不問になっている。

オランダは町の美しさも定評がある。Photo by iStock

駆け足で「憲法23条」に裏付けされたオランダの自由な教育制度を紹介してきた。

決してオランダの教育が完ぺきという訳ではなく、抱えている問題も少なくは無い。例えば、「(学区・予算的にも)学校を自由に選べる」という側面から、移民とローカルの生徒の人種間分離が進んでいるという指摘もある。そういった問題点も含めて、「世界一の教育」に選ばれた理由について、さらに別の回でも書いていきたいと思う。

次回は、日本人にはあまり馴染みのない「オランダの小学校における“留年&飛び級の普通”」について述べていきたい。そこにも成績による切り捨てではない、まさにオランダらしさが存在するのだ。