「教育の自由」を保障する憲法23条の存在

オランダの教育について語るとき、重要になるのが憲法23条の存在。この憲法でオランダの小学校は「教育費無料」「学校における教育方針の自由」「学校における宗教・信条の自由」などが保証されている。

小学校の生徒は、8年間に少なくとも7,520時間の授業を受ける義務があるが、その中でならどんな教材を使ってどのように教えていくかは、学校ごとの裁量にゆだねられているのだ(これについてはまた別の項目でたっぷりお伝えしたい)。

ちなみに一般的な小学校は、午前8時半から午後3時までで、水曜日のみ半日授業(12時または12時半まで)を行うところが多い。ただしこの時間配分も学校ごとに自由に決められるので、筆者の子供は水曜日を含む全日が午後2時15分までの小学校に通っている。

そして、そんな自由な憲法に守られたオランダの小学校は、様々な種類が存在する。その大まかなくくりは以下の通りである。

1.    公立小学校

政府によって融資され、各市役所または公的機関によって運営される。特定の主義信条を掲げない学校も多いが、いま話題のイエナプランやモンテッソーリ、シュタイナーなどの教育メソッドに沿った教育が提供される学校もある。オランダの公立学校は厳密な学区がないので、遠方の子供でも入学を受け入る(ただし空きがない場合は入学が許可されないことも)。 

日本のテレビ番組の影響で、「オランダの小学校はすべてイエナプラン方式」と勘違いしていた筆者の知人もいたが、実際には様々な教育スタイルが存在する。

2.私立小学校

オランダの私立学校は、主に、宗教的教育(カトリック、イスラム教など)に基づいている学校。組織または財団によって運営されている。政府の統計機関「CBS」によると、オランダの70%の子供が私立学校に通っているという。

ただし通っている本人たちは、「私立校」であるかどうかはほとんど意識していない。先日もアイルランド系移民の知人が「子どもをカソリック系小学校に通わせている」と言ったので「私立校だね」と返したら「え、無料だから公立でしょ?」と驚いてた。

私立も公立も無料であるため、生徒や保護者にとって大事なのは「どんな教育をするのか」であり、「私立なのか公立なのか」ではないのだ。

3.インターナショナル・スクール

オランダのインターには、公立と私立の2種類がある。私立インターは、憲法23条の適応外となり学費は生徒の全額負担になる。他国同様に非常に高額で、会社から補助の出る駐在員のような立場でないとなかなか手が出ない。ただし、公立インターナショナルスクールは部分的に政府によって助成されているため、私立よりも学費が安い。学校によっては学費は異なるが、地方によっては年間3800ユーロ(2017年12月現在約50万4千円)という学校もある。

4.移民の子供が最初に通う、オランダ語の補習校

この記事の冒頭で話題に出た、筆者の娘が移住当初に通っていた「オランダ語を話せない子供が通う学校」も無料であった(雑費として月3ユーロのみ負担した)。1年程度オランダ語を中心として算数や体育なども学ぶ学校で、ここで必要なオランダ語力をつけ、一般の学校に転校していく。移民の子供であっても、本人のやる気次第でしっかりとオランダという国に馴染むことができるようになるのだ。筆者の家は学校から遠かったが、通学に必要なスクールバスも無料で利用できた。

オランダ語のネイティブでない子が通う学校。もちろん清潔だし、給食もある。むしとオランダ語を丁重に無償で教えてくれるのでありがたい。写真/倉田直子

インターは別枠として、オランダの義務教育は基本的に無料。かかるのは、遠足費や学校でのリクレーション費のみだ。ただしこれも難しい場合は、自治体が肩代わりしてくれることもある。そのため、学費を気にすることなく本当に行きたい学校に申し込むことができるのだ。

これは保護者にとって非常にありがたい制度だが、「私立=有料、高額」という先入観の強かった筆者には驚きの制度でもあった。

では逆に、オランダ人から見て日本の教育費はどのように感じられるのかと思い、試しに娘のクラスメイトの母親に前ページで紹介した日本の現状を伝えてみた。するとその数字を眺めての第一声は、

確認なんだけど、これは大学の学費ではないのね? 小学校なのね?

だった。

「北欧の国とかと比べると、オランダの大学は有料なので不満を持っていた。でも、この日本の小学校の数字は更に衝撃的」とにわかには信じられない様子だった。初等教育最高学年である8年生(groep8)を筆頭に3人の小学生の母親である彼女は、もしかしたら自分の身にこの日本の教育費が3人分のしかかってくることを想像したかもしれない。

そして彼女は、「世界中の義務教育が無料で受けられるように願ってやみません」と締めくくった。