Photo by iStock

「世界一の教育」オランダの小学校は日本とはレベルが違った

「義務教育費が無料」の国で

「オランダ語を話せないということなので、当校ではお嬢さんを受け入れられません。その代り、オランダ語を話せない子供が通う私立の小学校があるので、そちらに行かれてはいかがですか?」

「ええっ! そんな学校があるんですね。……でも、お高いんでしょう?」

「いいえ、ところがなんと学費無料なんです!」

そんな通販チャンネルのような会話が、筆者の一家とオランダの小学校とのファーストコンタクトだった。筆者は、オランダに移住してから2年半になる。一人娘が当地の小学校に通い始めてからも同じだけの時間が経過したが、思い返してみると新鮮な驚きに満ちた日々だった。それもそのはずで、近年は「オランダの教育は世界一」とも言われているのだ。

これは、ユニセフ(UNICEF)の調査に基づく事実。世界の子供の支援や「子供の権利条約」普及に努めるユニセフは、数年ごとに先進国の子供を対象とした「子供の幸福度リポート(CHILD WELL-BEING IN RICH COUNTRIES: A COMPARATIVE OVERVIEW」を調査・発表している。2013年に発表された最新版(2017年12月現在)で、オランダが5項目中3項目(物質的豊かさ、教育、生活習慣)で1位を獲得し、先進国を中心とした29の国と地域の中で総合点で「世界一」を獲得したのだ。

では、具体的にオランダの教育は何が素晴らしいのだろう? ユニセフのリポートとは異なった視点から、「世界一の教育」となったオランダの現地校に子供を通わせている保護者である筆者が、数回に分けて書いていきたいと思う。

日本は公立小学校も「年間10万」以上だが

まずは、昨今日本でも話題になっている「教育の無償化」についてお伝えしたい。小泉進次郎が提案して話題を呼んでいるのは「こども保険」を利用しての「幼児教育」「保育料」の無償化だ。しかしオランダでは「義務教育」がほぼすべて無償なのである。

ちなみに文科省の「子供の学習費調査」によると、2016年度、日本では私立小学校に通うと子供一人当たり「年間93万1千728円」(授業料、給食費、校外活動費など含む)かかると言われている。授業料が無料のはずの公立校小学校ですら、「年間10万2千404円」(同)必要とある。

こうして改めて数字で見てみると、日本における子育て家庭の負担額が明確にわかる。ぜひこの数字を踏まえながら、オランダの実情と比べてみていただきたい。

まず前提として、オランダの「義務教育」について説明が必要だろう。オランダの義務教育は、5歳から16歳。オランダに住む5歳から16歳までの子供は、すべて学校に通う義務がある。これは国籍の異なる子供や、亡命希望者や難民の子供たちにも適用される。

とあるオランダの小学校。こんなにきれいでも無償である。 写真/倉田直子

多くの子供は義務教育前の4歳の時に学校に通い始める(groep1)が、4歳はまだ義務教育の対象ではないので、成績表がなく幼稚園的な立場だ。子供の成長度合いをみて、親が集団生活を5歳まで遅らせることも可能だ。義務教育は、子どもが5歳になった翌月1日から始まる。つまり一斉入学ではなく、各々のタイミングで学校に通い始めるのである。

 

成績表が付き始めるのは初等教育3年目のgroep3からで、groep8まで修了すると、その後は中等教育になる。職業的中等教育(VMBO)、高等一般教育(HAVO), 大学準備中等教育(VWO)などに分かれていくことになる。

16歳から18歳までは「資格義務」(kwalificatieplicht)と表現される。中等教育(HAVO、VWOなど)の卒業証書を持たない場合、引き続き教育を受ける義務がある。オランダは飛び級制度を採用していることので、16歳でも卒業証書を持てることがある。その場合はそこで通学をやめることができるが、そうでない場合は引き続き学校に通う義務があるという流動的なシステムなのだ。