祝・初タイトル!川崎フロンターレ「驚きの瞬間」ベスト3

心に残るイベントばかり
二宮 寿朗

あの人が…

続いて第2位はジャジャーン! 「実車版vs.ラジコン、そしてあの人が!」

2016年9月10日、アビスパ福岡戦。

ハーフタイムにフォーミュラカーを走らせるのはいつものパターン。すると今度はミニ四駆のエアロアバンテとラジコン版のエアロアバンテを競争させるという、奇想天外なアイデアを出してきた。それもラジコンを操縦するのが、球界きってのラジコン狂として有名な元中日ドラゴンズの山本昌さんであった。

結果はスタート地点に向かう途中で山本さん操縦のラジコンがクラッシュするというまさかの展開に、スタンドからは笑いも巻き起こった。本人は悔しそうだったが……。

この企画はサポーターからのアイデアが採用されている。月に一度、サポーターの代表者たちと“定例会議”を行なっており、サポーター側から「ラジコンと言えば、やっぱ山本昌でしょ」の一言で決まったそうだ。

「つくり手と、受け取り手が分かれちゃうとつまらなくなるんです。厨房に入ってもらって、一緒に料理をつくってもらう感覚。一緒にみんなで汗をかくから共有できるんです」とは担当者。なるほど、だからこそ受け手にしっかり届くのだ。また2位に推した理由としては“逆転の発想”。

サッカー専用スタジアムではない場合、競技用トラックがあるためスタンドからピッチまでが遠い。そのマイナス材料を逆手に取り、トラックを活かした企画だった。

第一位は…

そして第1位は、ジャジャジャーン! 「うそでしょ、宇宙との生交信」

2016年8月16日。

この日は試合のないノンフットボールデーながら、等々力競技場は多くの人でにぎわっていた。イベントは国際宇宙ステーション(ISS)との通信という、かつてない大型企画だった。回線がつながると「オーッ!」と歓声が上がる。大西卓哉飛行士の声が届くと、また「オーッ!!」。約20分の生交信。「宇宙でオーバーヘッドキックはできますか?」などの子供たちの素朴な質問に、スタジアムは笑いと笑顔に包まれた。スタジアムと宇宙の生交信という試みは世界初だったという。

 

準備期間は4年にも及んだ。

最初、企画をJAXA(宇宙航空開発研究機構)に持ち込んだ際には色よい返事をもらえなかったという。多忙な作業の合間を縫って、サッカークラブの企画に協力するというのはさすがにハードルが高かった。

しかしフロンターレはあきらめなかった。普段から企画のアイデアを出し合っている川崎市に協力を仰ぐことで、JAXAも次第に前向きになっていった。市の教育事業と連動した「JAXAフロンターレ算数ドリル」が市内の小学校に配布されるなど、宇宙への関心を高めることに一役買うことでJAXAとNASA(アメリカ航空宇宙局)を振り向かせたのだった。担当者も「行政の協力なくしては難しかった。10年前だったらこの企画はできなかったと思います」と語っている。

フロンターレは市が資本参加し、ファンクラブも市と各種団体で組織される後援会で運営されている。フロンターレは選手の商店街挨拶回りや選手による絵本の読み聞かせ会の開催など、地域密着に地道に取り組んで密接な関係を築いてきた。行政との太いつながりが「宇宙との生交信」という奇跡を起こしたのだと言える。

サービス精神、サポーターとのちょうどいい温度感、そして行政とのタッグ。

筆者のベスト3はたまたま昨年に集中してしまったが、今年も「福の神対山の神」やロッテとコラボレーションした「多摩川オカシコ」などフロンターレらしいこだわりの企画が多かった。

3000人しか集まらなかったスタジアムは2万人超えが当たり前になり、それが選手たちを後押しする力となって今がある。

アッと驚き、クスッと笑えるアットホームな企画。チャンピオンとして臨む2018年はどのようなイベントが待っているのか。ピッチ内もピッチ外も実に楽しみな川崎フロンターレである。