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自衛隊の「敵基地攻撃ミサイル」の実効性に関する大いなる疑問

トランプに言われて買ったはいいが…

防衛省は、航空自衛隊の戦闘機に搭載する長射程の巡航ミサイルを導入する関連経費約22億円を2018年度予算案に追加要求した。

これにより、自衛隊が北朝鮮の弾道ミサイル基地など敵基地を攻撃することも可能となり、「専守防衛」の枠組みを踏み越えるおそれがでてきた。敵基地攻撃能力の導入を主張してきた小野寺五典防衛相が自らの願望を実現した形になったが、実効性はあるのか。

 

がぜん現実味を帯びてきた

8月末に省議決定した防衛費の18年度予算案概算要求に、長射程の巡航ミサイルは出てこない。これに近い武器として、概算要求は「島嶼防衛用高速滑空弾(ミサイル)」と「島嶼防衛用新対艦誘導弾(ミサイル)」という2種類のミサイルを開発する予算を計上した。

どちらも長射程のミサイルで敵基地攻撃への転用は難しくないが、開発案件のため、自衛隊が装備できるまでには10年近くかかる。

一方、小野寺氏が内閣改造により、防衛相に就任したのは8月3日。概算要求の中身がほぼ固まった後だった。就任に先立つ今年3月、小野寺氏は自民党の「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」の座長を務め、「敵基地反撃能力を政府は持つべきだ」とする提言書を安倍晋三首相に提出している。

「反撃」という言葉を使ったのは「先制攻撃ではないのか」との批判を避けるためとみられ、実際には「敵基地攻撃能力の保有を提言した」とみても間違いではない。

敵基地攻撃について、政府は「誘導弾等の攻撃を受けて、これを防御する手段がないとき、独立国として自衛権を持つ以上、座して死を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」として合憲との見解を示してきた。しかし、実際には、攻撃は米軍に任せて自衛隊は専守防衛に徹し、敵基地能力は保有しないはずだった。

変化の兆しがみえたのは最近のことだ。小野寺氏は5月にワシントンで開かれたシンポジウムで「ミサイル基地に対して反撃する能力の保有を日本として検討すべきだ」との考えを披露した。すると、シュライバー元国務次官補代理は「日本がなぜこの能力を欲するか理解できる」と歓迎の意向を示したのだ。

日米の役割分担を見直し、日本側が「盾」だけでなく、「矛」を持つことに米側が賛意を示したことにより、敵基地攻撃能力の保有はがぜん現実味を帯びたといえる。

敵基地攻撃能力の必要性について、自民党や政府部内では「北朝鮮の弾道ミサイルに対抗するため」とされている。しかし、北朝鮮が発射を繰り返しているのは、米国まで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発するためであり、日本を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」は1990年代にとっくに実戦配備されている。

それでも北朝鮮のミサイル発射を前面に押し出し、「国難突破解散」と銘打った衆院選挙で勝利した以上、自らがつくり上げた「北朝鮮の脅威」に乗らない手はない。