あなたは部下に対して、「それじゃわからない。きちんと数字で説明してくれ」といった主旨の発言をしたことはないでしょうか。
ビジネスにおいて数字の重要性は言うまでもありません。ゆえに上述の部下への指示は、まったくもって正しいと言えるでしょう。
しかし、正しいことを言っていればビジネスは必ず成功するのかというと、そうではないように思います。
たとえば「残業を減らせ」という正論。残業を減らせばビジネスがうまくいくのなら、誰だって残業などしません。しかし現実はそうではない。
私がここで申し上げたいのは、ビジネスの世界で上司から部下に対して行われる「数字で説明してくれ」という正論が、はたして本当に有効なものなのかを疑ってみてはどうか、ということです。
今からご紹介するのは、私が企業研修でお会いした、ある若手ビジネスパーソンの実体験です。
わかりやすくするために、その人物を山田(仮)とし、会社のホームページのリニューアルを企画しているとします。その山田の相手を上司とします。
ある日、山田は上司にリニューアルするかどうか意思決定を求めました。
山田「今のホームページはもう5年もそのままであり、リニューアルするべきです」
上司「それだけじゃ判断できないから、とりあえずデータを出して」
(後日)
山田「関連しそうなデータを集めて資料にまとめました」
上司「…あのな、これじゃ何が言いたいのかわからないし、判断できない」
山田「ではどのようなデータが必要なのでしょうか…?」
上司「そんなことくらい自分で考えろ。それがお前の仕事だろう」
(後日)
山田「リニューアルの件、自分なりに考えてみました。3分ほどお時間いただけますか」
上司「ああ、他にもっと重要な案件ができたので、その件はいったん保留で」
山田「……」
いかがでしょう。どこの企業にもありそうな、上司と部下とのコミュニケーションではないでしょうか。今も山田はどうしたらよいかわからず、このような上司への対応に悩んでいます。
そこで1つ問題提起。この事例をお読みいただき、あなたはどのようなことをお感じになったでしょう。
この上司が意思決定できないのは、部下の責任? それとも…?