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安倍政権流法人減税が「悪い賃上げ」をもたらす可能性

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総選挙の流れで内部留保に標的

2018年度税制改正は、高所得者増税と賃上げ減税の2つが目玉である。

この2つの伏線は、10月22日の衆議院選挙である。選挙では、高所得者増税はどこにも言及されていなかった。だがら“抜き打ち増税”である。

その代わり、消費税を2019年10月に上げたとき、債務返済に回すはずだった4兆円のうち半分の2兆円を教育等無償化に使うことが決定した。まるで、消費税で財政再建ができなくなると、所得税にしわ寄せがくると言わんばかりだ。

一方の賃上げ減税は、希望の党の内部留保課税の提案に触発されたと感じさせる。企業が内部留保を溜め込むと課税するから、賃上げや設備投資を増やしてくださいというのが、内部留保課税の思惑だ。

希望の党の内部留保課税には、仕組みとして狙い通りにワークしない問題点があった。2018年度の税制改正は、賃上げや設備投資を増やすという狙いでは、希望の党の主張と一致する。

賃上げ減税は、内部留保課税と全く異なるが、賃上げや設備投資に熱心でない企業には、研究開発などの租税特別措置の利用を制限する対応を検討するという。そうしたアイディアは、衆議院選挙の影響を受けていると感じられる。

 

良い賃上げと悪い賃上げ

賃上げ減税の案としては、中小企業の場合、賃上げを前年比1.5%以上したときに、残業代などを含む給与支給総額の前年度比増加額の15%を法人税支払額から税額控除する。

大企業の場合は、3%以上の賃上げ、かつ、国内設備投資額が減価償却実施額の9割以上、という条件が付けられている。

そのうえで、給与支給総額の前年度比増加額の15%を税額控除する。ただし、最大で法人税支払額の20%とする制約が設けられる見通しだ。

さて、企業にとって、給与増加額15%の税額控除は、有効な賃上げのインセンティブになっているのか。

給与は、付加価値の中から配分する。例えば、企業が1000万円ほど給与を増やしたとすると、利益への分配はマイナス1000万円ほど減る。今回の税額控除によって法人税が150万円減り、税引後利益が150万円嵩上げされても、ネットでの利益は賃上げによる利益の減少幅の方が大きいため減ってしまう。それでは税制優遇の力は弱い。

もしも、賃上げをしても税引後利益が減らない仕組みにするためには、15%を70%以上(≒100%-法人税30%:現在の法人税の実効税率は29.74%なので、丸めて約30%とした)に変えればよい。

70%以上にすれば、例えば、税引前利益が6000万円の企業が給与を1000万円増やした場合、法人税支払額は700万円以上減る。したがって税引前利益は、給与増加額の1000万円ほど減って6000万円が5000万円になるが、これを、税引後利益にすると、4200万円から、3500万円プラス700万円以上となって利益は賃上げ後に増えることになる。こうした算術から、税額控除の15%が小さすぎると考えることができる。