ホモ・サピエンスが現われる前のアジアには誰がいたのか

こんな「小さな」人類も…!
川端 裕人 プロフィール

「島嶼効果」が人類にもおよぶという衝撃

フローレス原人も、祖先はもっと大きかったはずだと考えられている。それがいつしか、ここまで縮んでしまった。

その理由としては、閉ざされた島の環境が関係しているかもしれないという。

外界から孤立した島のような環境では、大型動物が矮小化したり、逆に小型動物が大型化したりする、いわゆる「島嶼(とうしょ)効果」が働くことがある。実例としては、現在の日本でも屋久島のヤクシマザルやヤクシカが、本土のニホンザルやシカに比べてかなり小さいことが挙げられる。

かつてのフローレス島でも、ゾウの仲間のステゴドンが肩の高さ1・5メートルくらいに小型化したり、ハゲコウという地上性の鳥が体長1・8メートルにまで大きくなったりしていたことがわかっている(国立科学博物館の復元[前頁写真]の背景にも描かれている)。ネズミも大型化していた。

しかし、「大きいものが小さくなり、小さいものが大きくなる」という変な「法則」には、釈然としない人もいるだろう。

そこで、島嶼効果についてのよくいわれる説明を紹介すると、こんなふうだ──

・閉ざされた島の環境では、食物や生活できる空間そのものも限られているので、大型動物は、代謝量が小さく性成熟も早い小型の身体を持ったほうが有利となる。そのため、矮小化しやすい。

・一方で、小型動物は、島には捕食者が少ないために、隠れやすいように身体を小さく保つ必要がなくなり、大型化しやすい。

このように説明されると、なるほど、そういうものかと、もっともらしく思える。

しかし、人類までがほかの動物と同じように、その「効果」の対象になってしまったのだとしたら、やはり、かなり衝撃的だ。

我々はなぜ我々だけなのか

さまざまな意味で常識破りのフローレス原人は、ことアジアにおいては、人類史を根底からひっくり返すレベルのインパクトを与えた。これまで、ヨーロッパに比べてどちらかといえば単調なものと思われていたアジアの人類史が、ダイナミックに描きなおされることになったのだ。

では従来は、アジアにはどんな人類がいたと考えられてきたのだろうか。

おそらく多くの人は、ジャワ原人や北京原人など、世界史の教科書に出てきたような有名な「原人」を思い起こすのではないか。

種としては同じ「ホモ・エレクトス」である彼らは、アフリカで誕生したのち、百数十万年前にはアジアにまで渡ってきていて、ジャワ原人、北京原人という地域集団に分かれた。

ジャワ原人のほうは10万年前くらいまでは生き残っていた。中国には数十万年前には、北京原人のあと、もう少し進歩的な人類(中国の旧人)がいたようだが、よくわからないことも多い。

 

つまり、北に北京原人がいて、南にはジャワ原人がいた、というのが、長きにわたって一般に語られてきた、アジアの古代型人類のイメージだった。

しかし、21世紀になってフローレス原人が発見されて、ジャワ原人とも北京原人とも違う「アジア第3の原人」として位置づけられたあと、まるで「蓋」が開けられたかのように、新発見が続いている。