快進撃WOWOW「熱い男の社会派ドラマ」女性プロデューサーの素顔

地上波にはマネできないことをやる
現代ビジネス編集部 プロフィール

永井P「『石つぶて』では、男ばかりの警視庁捜査二課の中で、紅一点の若手女性刑事が出てきます。飯豊まりえさんが演じているこの刑事が、きちんと成長していく姿にも光を当てられたのは、女性ならではの視点だったかもしれません。

それに、機密費を私的に流用していた北村一輝さん演じる犯人の愛人や、元妻たちが出てくるんですが、そういう女性たちが、なぜこんな男に惹かれてしまったのか、どんな気持ちで向き合っているのかも、通り一遍の表現をするのではなく、掘り下げて描こうとしているんです」

人間としての矜持と、薄っぺらにならない女性像。地に足のついた女性の発想で、丁寧に「人間」を描くことが、ドラマの中の表現を豊かにしている。

「企画と女性Pのミスマッチ」が俳優陣には面白い

岡野P「出演者に言っていただいた言葉で、強く印象に残っているものがあります。それは、『このドラマは、岡野・永井の企画だったから面白いんだよね』と。

私なりに解釈すると、役者さんの目から見たとき、いかにも硬派なノンフィクションを作りそうな企画者が、あれこれドラマとしての新機軸に挑戦するよりも、私たちみたいな30代の女性でも、ここまで面白がれる企画なんだ、ということを、出演者の方も作品の魅力として受け取ってくれているのかなと思っています」

永井P「私たちは本当に、佐藤浩市さんとお仕事ができたことは一生の財産だなと思っていて。佐藤さんは、広い視野に立って、ひたすらにドラマがよくなること、現場もうまく回ることを、ずっと考えていらっしゃって、アイデアもどんどんくださいます。

たとえば、第1回放送分では、外務省の職員が汚職をしているらしい、という情報を掴んだ佐藤さん演じる刑事が、公園の公衆トイレに行って用を足しながら、『……外務省、か』と呟く場面があります。

もともと、あの場面は公衆トイレという設定にはなっていなかったんですが、佐藤さんから『こうしたらどうだろう』とご提案があったんです。なるほど、大きな事件にであって、駆り立てられるような気持ちになることと、生理現象が結びつくんだなとすごく納得しました。この年齢の女性の私には、なかなか思いつけないことだと感じます」

 

岡野P「佐藤さんは、そういうアイデアを、衣装合わせのときなど、事前に、撮影スケジュール上、無理のないタイミングで提案してくださるんです。だから、私たちがロケ場所となる公園を探したりする時間的な余裕も、きちんと考えてくださっていると思います。いわゆる『座長』として、ドラマ全体のことを考えて行動してくださる方とお仕事をさせていただけるのは本当に貴重な経験だし、私も後輩たちを呼んできて経験させてあげたいくらいです(笑)」

業界のタブーに縛られない、WOWOWという「環境」。男女という別を越えて、視聴者を魅了する「人間像」を丹念に描こうとするテーマ選びのたしかさ。そして、女性プロデューサーという存在だからこそ、現場に与えられる「活力」。

取材現場でもひたすらにエネルギッシュな岡野・永井両プロデューサーを前にすると、WOWOWのドラマが強く、元気である理由が肌感覚でわかってくるようだった。

ドラマ「石つぶて」は12月24日に最終回の放送となったが、心にしみる台詞とともに実話の重みがずしりと響くエンディングには、高い「満足度」をつけたくなるのではないか。だが、そうした数字以上に期待が高まるのは、今後の日本のドラマ業界の行く末そのものだ。

「本当に面白いドラマを作りたい」というドラマ制作の灯火は、まったく消えていない。既存の枠を破って、新しく、面白い作品が若手の力で次々と生み出される日は、そう遠くないかもしれない。

※「連続ドラマW 石つぶて ~外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち~」をはじめとする作品を手がけた岡野真紀子プロデューサーは、2018年2月、放送界で活躍し功績をあげた女性に送られる「放送ウーマン賞」を受賞した。

贈賞理由として、「放送業界を取り巻く状況が大きく変化する中で、有料放送の特性を生かした見応えのあるドラマを次々に作り出している」ことや、「今や地上波ではなかなか見られなくなった社会性の強いエンターテインメント作品を実現させ、多くの視聴者の支持を得」たことが挙げられている。

WOWOWウェブマガジンでの岡野Pの受賞インタビューはこちら→https://corporate.wowow.co.jp/features/interview/3418.html

※「連続ドラマW 石つぶて ~外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち~」のDVDが、2018年4月20日に発売される予定。

(取材・文/長尾洋一郎)