快進撃WOWOW「熱い男の社会派ドラマ」女性プロデューサーの素顔

地上波にはマネできないことをやる
現代ビジネス編集部 プロフィール

企画・立案を行ったWOWOW側のPである岡野氏に対して、永井Pは主に撮影現場サイドの管理・運営を担当し、大まかに役割分担をしている。だが、台本作りやキャスティング、美術のセットイメージなど、作品の根幹にかかわる部分は共同作業だ。

永井P「喧嘩になることもしょっちゅうありますね(笑)。プロデューサーの仕事というのは、企画から予算取り、スタッフの座組み、キャスティングから、細かいことでは宣伝用スチール(写真)のチェックや、ポスターなどのデザインを決める作業までありとあらゆるものが含まれるんです。

岡野さんが『こういう美術にしたい!』とこだわっても、『そんなおカネどこにあるんですか』と私が言ったり。予算をどこにどう配分して、何に力点を置くべきかということを、常に考えています」

「女性プロデューサー」には、たしかなニーズがある

そんな永井Pも、本格的にテレビ制作の仕事につきたいとイメージを持つようになったのは、岡野Pと同じく、就職活動を控えた大学生になってからだったという。

永井P「テレビドラマに限らず、映画などの作品を作ってみたいという気持ちは早い時期からありましたが、大学では国際関係学部に通っていて、『映像の勉強をしたわけでもないのに、ドラマ制作はできないだろう』と思っていました。

ところが、就職活動が始まる前、OB訪問で大学を訪れた先輩の中に、NHKの番組ディレクターがいたんです。『こんな一般の学部に通っていても、テレビ制作の仕事はできるでしょうか』と訊ねたら、返事は『できるよ』。それならと制作会社の採用試験に応募して、2001年にテレビの世界に足を踏み入れました」

 

二人の話に共通するのは、「こうしよう」と思いついてからの行動の大胆さ、身軽さだ。大げさな将来像を頭に描いてドラマの世界に飛び込んだわけではない。「面白いことがしてみたい。そして、自分にもそれはできるらしい」と見極めた瞬間、その後の人生を決めるような大きな決断を下している。

岡野P「女性には、そういう大胆さがある、と世間では思われているところもあって、それはプロデューサーという仕事をする上では、ありがたいことだと思います。

いまやプロデューサーやテレビの仕事というものは、かつてのように志望者が殺到するような人気の就職先というわけではありません。私が就職活動をしていた2000年代初頭と比べても、テレビ局を志望する学生はかなり減っています。

その一方で、女性のプロデューサーというのは、増えてきている。最近はむしろ、女性のほうが多くなってきたかもしれません。それはなぜかと言えば、テレビへのあこがれといったような問題ではなく、テレビの視聴者には女性が多いのだということが、強く意識されるようになったからではないでしょうか。

結婚し、出産した女性だから共感してもらえる番組内容であるとか、若い女性に響くドラマとは何か、ということを、業界全体が模索している。私自身、ベテランの監督や脚本家の方から、『いまの女性なら、こういうときどう感じる?』といった女性ならではの意見を求められることがよくあります」

魅力を感じるのは「ひととしての矜持」

しかし、初回満足度1位を記録した「石つぶて」などは、非常に硬派なノンフィクション。出てくるキャラクターも「熱くて濃い男たち」だ。一見すると、30代の女性が興味関心を持つような内容とは思えないが、この物語の何に惹かれたというのか。

岡野P「それをご説明するには、企画の経緯もお話したほうがいいかもしれません。

私たちは、2015年に同じく清武英利さんの原作で、ドラマ『連続ドラマW しんがり ~山一證券最後の聖戦~』を制作しました。1997年の山一證券破綻後、会社が潰れてなくなっていくときに、最後まで残って『なぜ山一は破綻しなければならなかったのか』という調査を行った人々の物語です。

このドラマの反響が非常に大きくて、WOWOW放送番組審議会という、各界の先生方や弊社の上層部が集う会議で、『こういう作品をWOWOWの日曜夜10時にやるべきだよね』という一言をいただいたんです。

それで、『もう、これは私の使命だな』と思って、翌日さっそく清武さんにお時間をいただいて、『いま、何を調べてるんですか』とうかがったら、『4つくらいテーマがあるけど、まだ言えない』とおっしゃる。

それでも、2時間くらいお話をしていたら、ぽろっと『実は、陽の当たらない刑事たちがいるんだけれども、彼らはこんなことを成し遂げたんだ。それを書きたいと思っている』とおっしゃったんですね。

それで翌日、勝手に企画書を書いて、『これを来年の目玉でやりたいんです』とお願いしたんです」

こうした濃い男たちの物語にも、岡野Pが女性として魅力を感じる共通項があるという。

岡野P「清武さんも、私のWOWOWデビュー作である『なぜ君は絶望と闘えたのか』の門田隆将さんもそうですが、ご自身のジャーナリストとしての『矜持』、そして作品で描かれる人々がそれぞれに持っている『矜持』を大事にされる方です。

山一破綻の『しんがり』をつとめた人々や、巨大な国家のタブーに挑んだ一介の刑事たちというのは、もうほとんど『負けると分かっている闘い』に挑戦していくようなもの。でも、それを自分がやらねばならない、と強く思っている。そういう精神性のようなものには、女性の私も強く惹かれるんです」