赤ちゃん向けの絵本の制作プロセスに、発達認知科学や赤ちゃん学の研究を活かすことはできないか? 私の研究室では、出版社の協力を得て、「あかちゃん学絵本プロジェクト」を始めた。
プロのデザイナーに依頼してこちらが指定した(意味の無い)音に対する絵を描いてもらい、その中から音にマッチした絵を赤ちゃんに選んでもらうことを実験の目標とした。
こうして完成したのが『うるしー』、『もいもい』、『モイモイとキーリー』の3冊の絵本である。『うるしー』は、新米手品師うるしーが帽子から不思議なものを出していくという単純なストーリーの絵本である。
デザイナーの方々には、「うるしー」というキャラクターを想像して自由に絵を描いてもらった。集まったのは以下の4つである。
(1)
(2)
(3)
(4)
実験では、赤ちゃん(8ヵ月から14ヵ月児22名)に「うるしーだよー」という女性の声とともに4つの絵をコンピュータ画面に呈示し、赤ちゃんの視線をアイトラッカーで計測した。結果は、次のようになった。
赤ちゃんは「うるしー」という音声と最もマッチしているのは(1)のクマの絵だと判定したわけだ。一方、赤ちゃんのお母さんたちが選んだのは(2)だった。